本研究は、全国の高等学校における学習面・行動面の困難を抱える不登校生徒の実態、および学校内における支援の内容を把握するとともに、これらの生徒への支援ツールとして、早期発見のためのチェックリストの開発を目標とした。平成26年度は、調査の実施と解析、さらにチェックリストの開発をおこなった。 主な調査項目は、(1)不登校対応および特別支援教育の推進体制、(2)不登校生徒の状況および学習面・行動面の困難を抱える生徒の状況、(3)効果があった具体的な不登校生徒への支援内容、(4)学習面・行動面の困難を抱える生徒の特性詳細、(5)学習面・行動面の困難を抱える不登校生徒の不登校のきっかけと対応策、(6)発達障害生徒への具体的支援内容とした。とりわけ(4)はチェックリストの開発に使用した。 調査対象は全国の全日制を有する高校の52%にあたる2600校の高等学校とし、835校からの回答を得た(回収率32.1%)。解析の結果、1校当たりの不登校生徒数の平均値は6.34名であり、不登校生徒数全体に占める学習面・行動面の困難を抱える不登校生徒は30.8%であった。これは、全国の小中学校通常学級における学習面・行動面の困難を抱える児童生徒の割合である6.5%(文部科学省)を大幅に上回る数値であり、学習面・行動面の困難を抱える生徒は不登校になりやすい危険性を有しており、不登校予防に向けた支援の必要性と具体的な支援内容を明らかにすることができた。さらに、チェックリストは「注意を払うことの課題」「こだわりやコミュニケーションの課題」「社会性の課題」の3因子16項目からなる尺度として開発することができた。 今後は、これらの成果を使用し、チェックリストの妥当性を検証し、さらに精度を高めていくことを目指しており、研究を継続する予定ある。なお、今回得られた成果は、原著論文としてまとめ、日本保健福祉学会誌に投稿している。
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