本研究は、国際生活機能分類(ICF;International Classification of Functioning Disability and Health)から、精神障害者の生活能力を簡便に測定し、就労支援の可能性を予測できる「就労支援アセスメントツール」を開発し、就労に必要な能力と求められる支援内容を明らかにすることを目的としている。 具体的には、(1)精神障害者の精神症状と生活技能から就労可能性を予測できる「就労支援アセスメントツール」の開発、(2)退院から就労までの経過の実態把握、(3)就労の有無に影響を与える要因の解明、(4)実証データに基づく科学的かつ合理的な就労支援の検討、以上の4点から検討した。 本年度は、地域で暮らす精神障害者の就労に必要な能力を把握するため国際生活機能分類に基づき開発した『精神障害者就労支援尺度:JSM-ICF(Job Support Scale for People with a Mental Disorders-ICF)』を引き続き使用し、就労支援と就労移行についての把握を前向き追跡調査によって行った。 現在迄、精神障害者で就労を開始した者は、「コミュニケーション」や「対人関係」に対する困難が小さいことが明らかになった。支援の必要性が大きい精神障害者には、インターンシップ体験や実際の就労場面を模して、自己紹介や挨拶,会話といったより細やかな対人交流に焦点を当てた就労支援プログラムの強化が示唆された。
|