最終年度の研究実績の概要は以下の二点にその内容を集約することができる。 第一点目は権利擁護システムの実証研究期間である1年間の実証実験で得られた結果に基づく内容である。本研究対象として創設・開設したシステムの運用上の課題が顕在化したことからその分析を実施した。このシステムでは大別すると①相談窓口機能、②実際の後見活動、③担い手養成、④関係専門職のスーパーバイズ機能、⑤事例の蓄積などである。実証研究の対象であるA市権利擁護センターはセンターの機能を高めるため④及び⑤に関係するスーパーバイズ機能にポイントを置いていたが、この機能に課題の発生が判明した。困難事例提供側のスタッフがパワーレス状態に陥るなどの主観な自覚傾向が発現し、スーパーバイズ機能はその目的を十分に果たせない状況に至る。ここから明らかとなったのは先駆的な権利擁護システムを後発地域で参考としながら移植していく場合はその移植について十分な精査が必要であることが明らかとなり、この部分の研究は今後の課題として残された。これに関連し前年度までに権利擁護システムのプロトタイプ分類を実施したが、その運用システムについては地域でこれらのシステムを多機能に支援できる社会資源やネットワークの下地ともいうべき環境整備が必要であり、この部分の詳細な分析は課題として残されている。 第二点目は③担い手についての社会福祉法人後見の拡大の重要性が判明した点である。韓国での先駆的な取り組みを参考とすべくヒヤリング調査を実施した。ここから得られた結果では、韓国の事例にみられるような我が国の社会福祉法人に相当する専門職チームの活用の有効性である。社会福祉法人による後見受任は国内でも散見されるが、とくに専門スキルを必要とする意思決定支援に関するスキルの蓄積の可能性について注目することは今後の我が国における法人後見の可能性と重要性を探ることができた。
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