本研究は、第2次世界大戦後、疲弊した日本への支援として送られたララ救援物資の配分と受給の実態について、社会福祉の領域で明らかにするものである。福祉ニーズをもった利用者の生活支援を行う社会福祉施設の運営は、現在も財源の調達に多くの困難を抱えるが、戦後混乱期においては困難の度合いが非常に高かった。公的な支援体制が整わない環境下、社会福祉施設及び施設利用者がララ救援物資によって支えられたということを、世代間の言い伝えではなく、各種資料等、根拠をもって具体的事実であったことを検証し、ララ救援物資の意義と社会福祉施設への影響を分析すること、そして日本の社会福祉の歴史に位置づけることを目指すものであった。 最終年度は研究期間を通じて収集した情報・資料の整理に時間を費やした。救援物資の配分は全国に渡り、個人研究としてすべての地域で十分に行うことは限界があるため、戦災の大きかったAランク都府県等で収集した。昭和20年代に運営されていた社会福祉施設は当時の文書等、原資料を保存しているところは平成25年度末時点で数か所である。しかし設立記念誌などに記述されている例は複数あった。ララ救援物資が運営者にも利用者にも具体的な援助になったこと、その一方、問題もあったことなどが把握できる。当該社会福祉施設が設置されている地域の困窮の状況も具体的に記述されていることが多く、施設と地域とのつながりが把握でき、考察を深めるものである。なお、可能な範囲でLARA及びララ救援物資に関わる情報・資料の収集を継続した。 3年間の研究を通じて導き出された結論は、ララ救援物資の配分にまつわる一連の事柄は日本の社会福祉の歴史において、戦後混乱期の緊急援護を要する人々に対する支援の実際として十分に位置付ける意義をもつものであり、ララ救援物資を通じて戦後の社会福祉の展開に関わる様々な要因を検討することができるということである。
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