研究課題/領域番号 |
23530751
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
齋藤 知子 帝京平成大学, 現代ライフ学部, 講師 (10460289)
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キーワード | 児童虐待死事例 / 裁判記録 / インシデント・プロセス方式 / 海外(アメリカ・ハワイ州)情報収集 / 司法との連携 |
研究概要 |
わが国の児童虐待死の問題について、行政による検証が毎年報告され、法整備も進む中で、児童虐待死が一向に減少しない現状について分析し、検証方法に注目してきた。従来の児童虐待死亡事例に関する厚生労働省や地方公共団体による検証報告の方法では、介入した行政などの関係機関側からの一方的な調査やインタビュー対象であるという限界がある。その点について、児童虐待死について、より詳細に記されている裁判記録等を用いることで、加害親や被害児の状況に近づくことを可能とした検証、分析の方法論を提案し、さらにその方法を用いて事例検討会を実施し、児童相談所などの関係機関の介入のポイントを検証することで、裁判記録を用いる検証方法の有効性を明らかにする。 今年度は、今まで実施してきたA県の4事例の裁判記録等の閲覧結果の分析、事例検討会について、総合的に考察し、従来の検証では見えてこなかった加害親と被害児の状況をとらえることができ、これまでにない当事者性を踏まえた児童虐待死の事例検討の提案ができ、インシデント・プロセス方式を応用した事例検討会を実施するという方法で介入のポイントを検証することで、児童虐待死に関わる専門職の研修に活かすことができるといった本研究の独創性と意義を確認した。 また、前年度からの課題として残っていたアメリカにおける司法と児童虐待ソーシャルワークの連携について、ハワイ(オアフ島)において、児童虐待に通じている弁護士とCSW(チャイルド・ソーシャルワーカー)の2名にインタビュー調査を実施し、次年度にさらに裁判所への同行なども計画していく予定となった。わが国でも徐々に進みつつある司法機関との連携が、アメリカの事例の調査において、さらに日本の児童虐待の重篤な事例については司法機関との連携システムの構築を目指す必要性を提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
裁判記録の閲覧については、希望していたA県での5事例のうち、1事例について、申請書はH25年8月に提出してあるが、まだ記録が戻らず閲覧が滞っている。閲覧が完了しすでに実施された事例検討の分析などは順調に進み、総合考察まで達しているが、事例検討会や海外での情報収集(インタビュー調査)の内容について、ビデオや音声テープの文字化が進んでいないため、最終的な報告に達することが出来なかった。今後、すみやかに進めていく。 また、この裁判記録を用いた事例検討会の方法を実際の現場で活用することで、介入のポイントを明確にすることが出来るかを、さらに事例検討会を実施して有用性を確認していく必要があるため、児童相談所への参加の働きかけなどを行いながら、さらに進めていく。 前年度からの課題となっていた海外の調査では、現在までにアメリカ・ハワイ州(オアフ島)での弁護士と児童ソーシャルワーカー(CSW)へのインタビュー調査を行うことが出来た。どちちらも当初1日で終了する予定でいたが、弁護士の方からは、今後さらに裁判所に同行し、児童虐待の裁判事例の実際を調査することを進められた。また、CSWからは児童虐待死専門のCSWに検証と司法との関わりをインタビューする機会を作ることを進められ、最終年度に実施していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)児童虐待について裁判記録を閲覧し独自のフォーマットで分析した資料を事例検討会に資料として用いて、従来の検証報告と重ねながら再検証するといった「裁判記録を用いた事例研究の方法」を提案し、関係機関や専門職の参加を求めて事例検討会を実施していくことで、その重要性を立証する。 (2)司法機関と児童虐待ソーシャルワークとの連携について、海外事例について調査し、我が国における児童虐待死に関するソーシャルワークと司法機関の連携構築を示唆していく。 (3)上記(1)(2)の研究結果を整理し、報告会を開催し、さらに参加者から意見を収集しながら、総合的な報告書としてまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.予定していた5事例目の閲覧許可がまだ下りなかったため、今後、可能になり次第閲覧し、事例検討会を実施して、今までの4事例と合わせて、総合考察をまとめる。その後に、報告書としてまとめたものを完成させる。 2.今年度の10月に実施した海外インタビュー調査が、先方の好意により、再度、詳細なインタビューの実施が可能になったため、今後に向けた児童虐待死防止のためのシステムと司法との連携について提案を目指すため、再調査を実施し、より詳細なシステムの構築を提案する。 1.5事例目の裁判記録の閲覧とその事例を用いた事例検討会の実施。閲覧にかかる費用や複写代金、事例検討会の参加協力者への謝金などに使用する。 2.海外インタビュー調査(ハワイオアフ島 裁判所で児童虐待事例の検証、児童虐待死専門のCSWへのインタビュー)を実施するための旅費、通訳費、謝金に使用する。 上記の1.2について報告会の実施(参加者への謝金・旅費)と報告書の発行(テープ起こし、製本代金)を行うために使用する予定である。
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