研究課題/領域番号 |
23530762
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
坂田 伸子 東洋大学, 社会学部, 助教 (60408961)
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キーワード | 高齢者虐待防止 |
研究概要 |
本研究は、量的調査では明らかにならなかった市町村と地域包括支援センターの高齢者虐対応に関する認識の相違を、フォーカスグループインタビュー調査により明らかにして、地域包括支援センターにおける高齢者虐待対応の促進に貢献することを目的としている。平成23年度のX市Y行政区に引き続き、市区町村においてフォーカスグループインタビューを実施した。 今年度はZ特別区の20か所の地域包括支援センター職員と行政職員に対象に、①社会福祉士職グループ、②保健師職グループ、③主任ケアマネジャー職グループ、④行政職員グループで実施した。昨年のY区は行政職員も多く各地域包括支援センターの担当者を配し、月1回の3種別会議を行政を交えて開催していた。今年度のZ区は、20か所の地域包括支援センターを数人の行政職員が担当していて、全地域包括支援センターの職種別定例会議の開催がなかった。このように昨年度とは異なる体制の市町村を選び調査を実施した。 フォーカスグループインタビューは、平成24年11月3日~11月30日の間に4回実施した。参加者は、①社会福祉士職グループ30名、②保健師職グループ21名、③主任ケアマネジャー職グループ20名、④行政職9名であった。各グループの参加者が多かったため、5~6名のグループに分けインタビューガイドをもとに実施し、司会者も各回3名を配し、この研究で招集した委員会の委員等に依頼した。調査対象者に対しては個人情報に関しての保護の説明や目的等を説明後、録音の許可を得て実施した。実施後のインタビュー調査に参加しての意識に関する郵送質問紙調査を3月に実施した。 今回の調査から、行政と地域包括支援センターの体制による高齢者虐待対応の違いが明らかになり、市町村ごとの課題と体制整備促進のための対応も個々に考えることの必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一に、平成23年度、平成24年度ともに市町村に対するフォーカスグループインタビューが実施できたことからおおむね順調といえる。全地域包括支援センターの3職種職員が対象のため、いろいろな市町村に打診したが、断られた。昨年は、毎月定例の職種別の会議を開催している市町村で調査者と各会議の日程調整で済んだため、フォーカスグループインタビュー調査を受け入れてもらえた。しかし、今年度は昨年度より地域包括支援センター数が多く定例会議を実施していない市町村での調査を検討していたため、全地域包括支援センターの3職種を1か所に集めることへの各地域包括支援センターの同意と、日程調整が不可能という理由で断られた。 そのような状況の中、行政主体で3職種別の研修会を開催するという市町村に承諾していただき、研修会の一部の時間をいただいてインタビュー調査ができた。フォーカスグループインタビュー調査の市町村への依頼からも、行政と地域包括支援センターとの関係を把握することができた。 第二に、3月時点でインタビュー調査のテープ起こしが完了しているからである。ただ、フォーカスグループ実施時期が遅れたため、分析に関して当初予定より遅れている。また、同様にインタビュー調査の実施が11月末までかかったため、インタビュー調査実施3ヶ月後のフォーカスグループインタビュー参加後の郵送質問紙調査も3月22日締め切りに設定したが、まだ未返却の地域包括支援センターがあり集計することができず、遅れている状態である。 以上の点から、本研究は、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、平成24年度のフォーカスグループインタビューの分析と、フォーカスグループインタビュー実施3ヶ月後の郵送質問紙調査の集計を行う。 第二に、平成23年度調査結果と平成24年度調査結果から行政と地域包括支援センターにおける高齢者虐待対応に関する課題を明らかにし、市区町村における高齢者虐待対応の体制整備促進への提言をまとめる。 第三に、「地域包括支援センターの高齢者虐待対応を促進する為のグループインタビューによる研究」検討委員会を3回開催する。第1回委員会では、本研究の分析方法等について検討し、第2回委員会では分析結果の報告と報告書作成等について、第3回委員会では本研究のまとめを行う。 第四に、平成24年度の調査概要を第10回日本高齢者虐待防止学会で発表する。研究結果を学会誌等に発表する予定である。 第五に、本研究を市町村の高齢者虐待対応の体制整備の促進に役立てるため、研究の報告書を市町村に配布する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度への繰越金が生じた理由は以下の通りである。まず、平成24年度は複数の市町村にフォーカスグループインタビュー調査の実施を依頼したがなかなか了解を得られず、11月3日~30日に実施することになった。年度内に業務委託による分析を行う予定であったが、テープ起こしまでしかできなかった。さらに、インタビュー調査実施3ヶ月後の質問紙調査の実施も3月になり3月22日を締め切りにしたが、平成24年度中にすべての地域包括支援センターからの調査票の回収ができず、データ入力、集計作業ができなかった。 当初の実施計画よりフォーカスグループインタビューの実施が遅れたために、フォーカスグループインタビュー調査の分析にかかる予算と、郵送自記式質問紙調査のデータ入力、集計にかかる予算を次年度に繰り越すことになった。 次年度は、平成24年度からの繰越金で、作業が遅れている平成24年度フォーカスグループインタビュー調査の分析と郵送自記式質問紙調査の入力・集計の業務委託をする。平成25年度の研究費は、質的調査の分析ソフトの購入と、3回開催予定の委員会のための委員の旅費、業務委託費、事務手続き等のアルバイト代として使用する。さらに、平成25年度は本研究の終了年に当たるため、報告書作成にかかわる印刷代(校正作業を含む)と郵送代として使用する予定である。
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