本研究は、2つのエリア内の全地域包括支援センター(委託型)3職種別グループ(社会福祉士、保健師、主任介護支援専門員)、行政担当者に対してのフォーカスグループインタビュー調査を実施して地域包括支援センターと行政との高齢者虐待対応における現状と課題を明らかにし、是正案を提示し高齢者虐待対応促進に貢献することを目的とした。 半構造的インタビューガイドを用いたグループインタビュー法により、所要時間60分で1回、各グループを10名以下に調整して実施した。インタビュー前に、フェイスシートと市町村における高齢者虐待防止対応のための体制整備等についての自記式質問紙調査を実施した。さらに、調査実施後約3カ月の時点で、インタビュー調査後の高齢者虐待対応の変化や気付きに関する郵送自記式質問紙調査を実施した。これらの調査に関しては調査内容を説明し同意を得たうえで実施し、人権及び権利に十分注意して実施した。 調査から、エリアや各地域包括支援センターが抱える地域独自の課題と共通課題があることが示唆された。本研究では、共通の課題を「行政の内部体制」・「委託型地域包括支援センターの内部体制」・「行政と地域包括支援センターの連携・協働体制」・「地域包括支援センターを取り巻く地域体制」・「国レベルの政策」の5項目に分類し、高齢者虐待対応体制の推進に向けての提言(案)を示した。また、行政と地域包括支援センターの業務量の軽減策として、NPOや独立型社会福祉士、専門職等の退職者の活用などを提案した。 今後の課題は、より多くの市町村で同様の調査を実施し、普遍化できる提言にすることと、各地域包括支援センターの高齢者虐待対応のノウハウをネット上で共有できるシステムの開発等である。研究成果は、市町村の参考にしていただくため論文発表や学会発表の他に報告書を作成し、全都道府県の高齢者虐待担当部署、首都圏の一部市町村に配布した。
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