教育プログラムモデルの検討については,外国籍母子支援団体及び機関に対する調査結果を踏まえ,援助に当たるスタッフの研修プログラムを立案し試験的に実施した.研修内容は,コミュニケーション,アセスメント,ストレングス・アプローチについて取り上げ,計4回実施した.また,事例研究の手法を用いて実践の理論化を意識した内容を実施した. 施設を利用している母子は,家庭内暴力(DV),虐待,人身取引,離婚,親子分離,虐待,ネグレクト,売春強要,住居問題,在留資格の喪失といった危機に直面している.ソーシャルワークの観点からみると,危機的状況に置かれた利用者との援助関係の形成においては,語学スキルだけではなくアセスメントや問題解決において相談援助のための専門的知識や技術が必要となる.さらに,言語能力,専門知識,文化への理解,秘密保持などの原則や価値を理解していることも必要になっている.また,援助を継続的に実施するための組織体制やスーパービジョン機能,そして心理的サポートプログラムの整備の必要性が明らかとなった. 外国にルーツを持つ人を対象多文化ソーシャルワークにおいて,実践の質を担保し,技術を向上させるためには,人材養成を担う教育レベルでコンテンツが整備されていることが前提となる.日本のソーシャルワーク教育においても,グローバルスタンダードの観点から文化的側面を包含した実践理論モデルを構築することが求められる.
|