研究課題/領域番号 |
23530770
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
金子 充 立正大学, 社会福祉学部, 准教授 (30366950)
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研究分担者 |
平野 寛弥 目白大学, 人間学部, 講師 (20438112)
堅田 香緒里 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 助教 (40523999)
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キーワード | 社会政策 / 普遍主義 / 互酬性 / ベーシックインカム |
研究概要 |
本研究では、イギリスにおける批判的社会政策論(critical Social Policy)、すなわちマイノリティ等のヴァルネラブルな人々の差異・アイデンティティに配慮した社会政策を構想する研究潮流を支える視点および鍵概念(とくに「普遍主義」「互酬性」「シティズンシップ」概念)の整理と再検討をおこない、またそれらをふまえて海外の社会政策研究者に対してヒアリング調査を実施し、あわせて意見交換をおこなってきた。平成24年度には、これらの議論をめぐる意見交換・研究成果の公開を目的に、海外研究者を招聘して国内4ヶ所でシンポジウム等を実施した。平成25年度は、前年度までの研究で得られた議論の成果と考察等を整理し、また個別の政策課題にどのように適用できるのかを検討した。 経年の考察と研究成果の整理の結果、ベーシックインカムや普遍的な手当制度の意義が確認され、とりわけわが国の生活保護制度や失業者・生活困窮者支援の課題が浮き彫りになり、年金保険・雇用保険、就労支援施策等との関連において見ても、普遍主義や互酬性に代表される社会政策の鍵概念への理解をふまえた政策が十分に議論、展開なされていないことが考察された。イギリスの所得保障政策においても、貧困の罠/福祉依存や就労インセンティブの低下回避等を目的に、所得補助や求職者手当等の各種所得保障制度を「ユニバーサル・クレジット」へと再編する政策展開がなされているが、これらは能力に応じて就労または活動への従事を求める給付としての性格が強く、限定的な意味での普遍性や、個人単位において権利と義務を対応させる互酬性に依拠した政策展開をしていることが考察された。以上の理論的・政策分析的な考察を通して、社会政策がヴァルネラブルな人々を排除することなく必要を充足し、普遍主義と互酬性の理解の下でのシティズンシップを保障する必要性を確認することができた。
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