研究課題/領域番号 |
23530771
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
川名 はつ子 早稲田大学, 人間科学学術院, 准教授 (50091054)
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キーワード | 国際情報交換(上海、香港、広州、青島) / 国際研究者交流(英国) / 障害児 / 里親養育 / ファミリーホーム / ライフストーリーワーク |
研究概要 |
1.国内の社会的養護の現場における障害児の養育事例の当事者のうちから、措置解除あるいは解除のおそれのある10人にインタビューを実施し、得られたデータの解析に着手した。KJ法による質的解析を行ない、障害児の里親養育の有用性だけでなく、困難な点や危険性についても重点的に考察している。 2.中国の中でも先駆的な取り組みをしている香港、広州、青島、上海の4か所の機関と施設を訪問し、聞き取り調査を実施した。香港基督教服務処里親委託業務担当者および救世軍港澳軍区平田児童之家ソーシャルワーカーの聞き取り調査を通じて、香港では「子どもの家庭復帰」という明確な目標のもとに里親養育に取り組んでいることが明らかになった。また広州児童福利院の院長、青島児童福利院の主任、華東師範大学教授などへの聞き取り調査から、里親養育を拡充するためには、里親家庭への手厚い支援が最も重要と示唆された。いずれの地域・機関・施設においても、子どもの権利条約を基盤に据えて遵守しながら子どもたちの養護に当たっていることが明らかとなった。 3.ライフストーリーワーク(LSW)については、米国から、英国のSACCSで長年多大な困難を抱えた子どもたちのケアに携わってきた元職員を招聘してのシンポジウムを養子と里親を考える会と共同で開催し、LSWの適用例や具体的手法まで講演していただくことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
連携研究者や補助者の協力を得て、ほぼ予定通りに国内外での調査は進んでいる。しかし、下記のように一部に遅れが生じる一方、予想外の成果もあった。 1.里子の措置解除を巡る里親の聞き取り調査の結果を学会誌に投稿する予定が遅れている。 2.上海で、里親養育の拡大に成功している現場を訪問し、里親へのインタビューも実施する予定だったが、連絡の行き違いのため来年に持ち越しとなってしまった。 3.一方、代表研究者が所属する他の研究会との共催で、来日した英国SACCSの元職員(米国に転職)をシンポジウムに招き、LSWについて体験を交えた詳細なお話を聞くことができたのは、予想外の成果であった。
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今後の研究の推進方策 |
1~3のように、これまで2年間の総括をして社会への提言まで行なう予定であったが、研究代表者が2013年4月から2014年3月までの1年間イタリアに滞在することになったため、4~5の変更が生じる。 1.日中の調査結果を比較して総括を行ない、障害児の里親養育を促進あるいは阻害する要因を把握し、今後どのような社会福祉的な立場での支援が望ましいかについて総合的に考察を加える。 2.LSW については24年度に作成したモデルを精緻化しつつ,学会発表・論文作成の期間に充てる。 3.これらの解析結果から得られる知見を支援現場にフィードバックし、子どもの権利条約にのっとった里親養育支援の新しいモデルの開発と、それを実践に結実させるためのまとめを全員で合議して行なう。 4.ここにイタリアでの調査および欧州における共同研究が加わる。 5.また、遅れている国内の里親インタビュー調査の結果をまとめ、学会発表と学会誌への投稿を行なう。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.イタリアの障害児や里子の社会的養護の事例調査のため、調査のアレンジや通訳を担当する研究補助者への謝金、交通費など(30万円) 2.オーストリアやスウェーデンで同様のテーマを研究している日本人研究者と連携しての調査が可能となった。交通費や打ち合わせ費など(25 万円) 3.中国での調査は、連携研究者の主導で、中国から留学している大学院生も参加し、予定通り上海、瀋陽などで実施する(旅費、会議費など50 万円) 4.里親やその支援機関職員、社会福祉を学ぶ学生などへのLSWの研修プログラム開発用経費など(30万円) 5.学会発表のための国内旅費(20万円) 6. 消耗品費、通信費など(141,681円) 総計 1,691,681円
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