研究課題/領域番号 |
23530776
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研究機関 | 金城学院大学 |
研究代表者 |
原 史子 金城学院大学, 現代文化学部, 教授 (20300147)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 社会的養護 / 社会的排除 / 貧困の再生産 |
研究概要 |
2011(平成23)年度の主な課題は、Z学園(児童養護施設)の退園者データベースを作成することであった。Z学園は1960(昭和35)年に設立された施設であり、平成21年度までに1,117人の児童が退所している。 そのうち、1960(昭和35)年4月の入所者から2011(平成23)年4月に退所した約1,100人分の記録にあたることができた。施設入所に至るまでの児童相談所の相談記録および施設入所後の児童の記録に基づき、入所前の本人および家族の生活歴について解析をすすめた。 入所年齢は13歳が最も多く、退所年齢は15歳(義務教育修了)が大多数である。施設利用年数は1年未満の者と1年以上2年未満のものが半数を占める。この結果については、調査対象施設が、児童福祉法改正により2003年10月に虚弱児施設から児童養護施設に移行したことによる特徴であるとみるべきであろう(虚弱児施設は昭和40年代以降、不登校児の入所が増加したため、中学生年齢での入所が多い)。 また、入所時の主な家族形態は、両親世帯が491件、父子が109件、母子が166件、実父と継母等が25件、実母と継父等が43件となっている。 入所理由は、詳細は現在分析中であるが、主訴および記録から、不登校、虐待、ネグレクト、困窮、かん黙、家庭養育困難、家族調整、性格行動改善、情緒障害、教護、虚弱、要養護、触法・非行、身体疾患、身体障害、安全確保、措置変更、心身症、暴力行為、療育、発達障害、知的障害、精神疾患、自傷、自閉、養育者不在、等が複合的に現れている。つまり、複雑な課題を抱えて入所に至っている例が多い。このことは、施設入所に至る背景は1つの問題だけではないと従来から語られていたことについて、実証的に示すことができる極めて貴重なものとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2011年度の主な研究課題である「施設退園者の動向について、入所中から退所直後までの基礎情報を整理しデータベース化する」については、概ね達成できた。 1960(昭和35)年4月の入所者から2011(平成23)年4月に退所した約1,100人分の記録にあたった。施設入所に至るまでの児童相談所の相談記録および施設入所後の児童の記録を参照し、入所前の本人および家族の生活歴について整理した。施設利用者の入所前から退所に至るプロセスについて、入所および退所時の年齢、入所理由、入所前家族構成、家族関係、施設利用年数、入所中の状況、退所後の行き先等について、データベースの作成を行うことができた。分析については現在実施しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
2012年度研究の主な課題は、施設退所者のインタビューにより生活史調査を実施することである。現在、施設職員の協力を得、生活史調査対象者の選定を行っている。自己を客観的に認識できる状況にあるものということで、施設卒園後10年以上経過している卒園者を10~15名ほど選定している。その後、生活史調査対象者が退園者全体の中でどのような位置づけにあるのかを2011年度作成のデータベースで確認し、生活史調査を実施していく予定である。 また、同時に2011年度に入力したデータの詳細分析も実施する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
2012(平成24)年度の研究費の主な使用計画は、インタビューによる生活史調査を実施するための経費、録音したインタビュー内容から逐語録を作成するための謝金として使用する予定である。さらに、先駆的な自立支援を実施している機関・施設等調査のための交通費等として使用する予定である。
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