研究課題/領域番号 |
23530776
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研究機関 | 金城学院大学 |
研究代表者 |
原 史子 金城学院大学, 人間科学部, 教授 (20300147)
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キーワード | 社会的養護 / 児童養護施設 / 自立支援 |
研究概要 |
2012(平成24)年度の主な課題は、児童養護施設卒園者の生活史調査を実施することであった。調査対象施設で卒園後10年以上経過している卒園者を13名ほど選定して頂いた。調査は、男性6名、女性5名の計11名(30歳代3名、40歳代4名、50歳代2名、60歳代2名)に受諾して頂くことができた。 一人あたり約2~3時間超の半構造化面接を実施し、施設入所前の生活、施設入所中の施設職員・他の入所児童との関係、家族との関係、施設入所中の学校生活について、進路選択と施設退所前後の生活、施設退所後から今日までの生活などについて自由に語って頂いた。 インタビューをさせて頂いた11名の方々の話から、施設退所後の継続的な支援は極めて重要であり、継続的支援のキーパーソンとなりうる職員(特に女性職員)が退職せずに働き続けることのできる環境が必要であること、また親を頼ることのできない状況にあった7名の方の話から、結婚・子育てなどに際して、社会一般の理解を醸成していくことの必要性を感じた。 先行研究の中でも、児童養護施設卒園者に面接調査を実施することはかなりの困難を伴い、実際に面接を行える施設卒園者は限られていると述べられているが、面接できなかった者の方が相対的により多くの「問題」を抱えている可能性を常に残していると考えられるということを、生活史調査を実施することで実感することができた。ヒアリング内容の整理・分析は終了していないため、2013(平成25)年度に継続して実施する。 なお、前年度に作成した施設退園者データベースの詳細分析をおこない、学会および調査を実施させて頂いた施設で研究報告をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
生活史調査を実施するにあたって、一定数の対象者を選定し話を聞かせて頂くための了承を得ること、およびインタビューの日程調整に予想以上の時間がかかってしまった。そのやり取りも含め、インタビューを通常授業のある期間に行うことは時間的に極めて難かしく、インタビューは2013年3月まで実施することとなってしまった。 また、録音したインタビュー内容は研究補助者に逐語録を作成してもらうことを予定していたが、内容がプライバシーに関わるため研究補助者への依頼を断念した。そのため全ての内容を起こす段階にまで至らず、内容の整理・分析を2013年度に引き続き実施することとなった。
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今後の研究の推進方策 |
1.2012年度に実施した生活史調査の整理・分析を継続して行う。 2.調査対象施設の支援の特徴、児童の保護者とのかかわり、学校における児童養護施設児童への支援等について、施設職員、児童相談所職員、学校教員などへのヒアリングを実施する。 3.近年、児童養護施設退所児童への支援を先駆的に始めている自治体や機関が散見されるが、そのような自治体や機関へのヒアリングを実施する。 4.要養護児童への支援について他国の先進的な取り組みについて調査する。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013(平成25)年度の研究費の主な使用計画は次の3つである。 1.生活史調査の逐語録を作成するために、プライバシーに配慮し実施できる人・もしくは業者を選定し実施するための費用 2.施設職員、児童相談所職員、学校教員、先駆的な取り組みを始めている自治体や機関へのヒアリングのための調査旅費および謝金 3.他国の先進的な取り組みを調査するための調査旅費
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