研究実績の概要 |
2014(平成26)年度は、各県に広がりつつある児童養護施設退所者等の社会的自立の促進を図ることを目的として設立されている「退所児童等アフターケア事業」を運営している団体等へのヒアリング調査を実施した。近年各県で実施されつつある事業であるが、運営主体の形態も多様であり、それぞれに課題を抱えていることを把握したとともに、極めて重要な事業であることが確認できた。また、2012年度に実施した児童養護施設退所者へのインタビューの分析をすすめ、学会および調査協力先施設で研究報告をおこなった。
研究期間全体を通じて実施した研究の成果や意義は次のようである。 1.これまで児童養護施設退所者の家族的背景については複合的な問題が指摘されてきたが、それについて実証的なデータを得ることができた。そのデータにより家族が抱える問題の重層性と施設入所にいたるプロセスについて分析することができた。 2.既に「生殖家族」を形成している児童養護施設退所者へのインタビュー調査で入所前から入所中、退所後から現在に至るまでの生活史調査を実施したことにより、就職・結婚・子育ても含めた状況について聞き取ることができ、長期的な視点で施設入所中から、また、退所後に必要な支援について検討することができた。 3.上記1,2の調査結果から、施設入所中および卒園後の「主体的な生活」を可能にするには、子ども本人が入所理由や家族状況を年齢に応じて理解していることが日々生きていく基盤として必要であること、また、「自立」支援は施設入所中の日々の生活や生活過程のなかにあること、退所後の生活の安定化には、高校進学・資格取得・継続した就労が重要であるとともに、同時期に施設に入所していた友人、施設職員との繋がり、学校の教員、職場での人間関係などが維持されていることの影響が大きいことが明らかとなった。
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