1.最終年度(2014)の研究成果:東アジアにおける地域の互助組織について調査を行ってきたが、最終年度は韓国、安東における伝統的な儒者の祀りに参加し、地域における互助の規則を「郷約」として地域住民に周知する儀式が実施されていることを確認し得た。また同地区内の安東河回村両班家系の当主より「八里四方の互助」が言い習わされてきたという証言を得た。韓国では、すでにその数は2例に過ぎないが、儒教の教えを説く書院において、「郷約」文書が祭りの際に読み上げられ、地域住民がこれに氏名を書して、このルールの遵守を確認し合う儀式が行われていることを確認した。 2.研究期間全体を通じて実施した研究の成果について:東アジアにおける地域の伝統的な互助組織として「郷約」の実態について調査を実施した。「郷約」は中国において11世紀に「呂氏郷約」として普及したが現在は皆無であることから、中国では文献の収集を行った。この「郷約」はベトナムと韓国に伝播し、今日も地域住民によって継承され、守られており、この実態を調査した。ベトナムでは各村落の自律性が高く、農村部では「郷約」が継承されており、都市部ではベトナム戦争の1970年代に「郷約」が書き直された事実を把握し得て、現在もその存在と機能が確認された。「郷約」は街中の廟の石碑に刻まれたり、祭祀の際の決まり事や役割分担を記した規則として、現在も機能している。一方、台湾や日本では「郷約」は発見されなかった。
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