研究概要 |
社会福祉学研究領域における,高校福祉教育の研究は少数に留まる.特に,「持続可能」な福祉教育や,「職業的レリバンス及び教育的レリバンス」の文脈で論じた研究は寡少である.従って本研究では,当該年度までに明らかにした福祉系高校における「職業的及び教育的レリバンス」の研究成果を前提として,高校生と福祉現場とのミスマッチによって生ずる「負のレリバンス」に対する教育的な支援の方策を検討した.その結果,「負のレリバンス」は,①福祉に対する目的意識や親和性の低さ,②現場実習までの学習や準備の不足,③実習中の報告や相談などコミュニケーションの不足,④施設側と高校教員の連携のしづらさ,⑤事後指導の不十分さなどが,複合的に関連していた.従って,このようなリアリティショックを巡る矛盾や葛藤の除去・軽減に向けた教育的支援が必要であるとの結論を得た. また,効果的な福祉教育プログラムの開発を行い,福祉教育テキスト「Welfare-福祉ー」を出版することができた.現在,福祉系高校を中心に試用及び実験授業を実施している段階である. さらに,キャリアラダー志向による「上昇的レリバンス」の存在を,福祉専門教育を支える職業的レリバンスと,福祉教養教育を支える教育的レリバンスの関連に着目して検討した.その結果,キャリアラダー志向は,マクロ(日本の福祉系高校に関する社会福祉教育政策)・メゾ(福祉系高校の学校経営)・ミクロ(生徒の学び)の各レベルにおいて,社会保障審議会で示された福祉系高校卒業生の福祉分野に密接に結びついていることが明らかになった.そして,福祉観を醸成する福祉教育やボランティア活動が,青年期の早期離退職や不就労の社会問題に対して,有効な就業力エンパワーメントの基軸であるとの示唆を得た.
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