研究課題/領域番号 |
23530787
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
朴 光駿 佛教大学, 社会福祉学部, 教授 (30351307)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 高齢者自殺 / 東アジア |
研究概要 |
日本・韓国における高齢者自殺者の規模を明らかにした。中国の高齢者自殺については、その統計が公表されていないが、衛生部が公表している公式的統計の取りまとめの方法については聞き取り調査を行い、その方法を把握した。また、世界保健機構が設立した「北京自殺予防協会」を訪問し、関係者に対する聞き取り調査を行うとともに、同協会が発行してきた中国自殺観連資料や論文集を収集した。韓国の高齢者自殺については、釜山自殺予防センターを訪問し、その実態調査を行い、自殺統計の取りまとめ方を確認した。東アジアの家族主義文化が高齢者の安定した老後生活を脅かしているという観点から、高齢者にとって子女との同居が必ずしも幸せを意味するものではないということを、東アジアと類似な社会文化と持っているとされる南ヨーロッパの文化圏と比較することによって明らかにした。また、高齢者の自殺率に影響を与える東アジアの社会文化については、儒教と仏教の本来の教えは、決して自殺を認めていないということを、儒教経典と仏教経典、そしてその自殺観に関する論文内容の分析を通じて明らかにした。なお、仏教の自殺観に関連して、ブッダの死に関連する遺跡地を対象とした現地調査を行い、それによって確認された内容は報告書としてまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は計画通り進展している。高齢者自殺の規模と動向、高齢者生活実態の分析は計画通り進展している。ただ、中国の高齢者自殺の規模については、政府統計よりは多いとの指摘があり、それについては、関連研究者との聞き取り調査が進められている状況にある。中間報告についても、中国社会科学院での国際会議で、研究報告を行い、日中韓の関連専門家から諮問を受けている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は高齢者の生活に大きな影響を与えている「親から独立しない成人子女の問題」を明らかにするために、中国老齢科学研究センター、中国社会科学院社会保障研究センター、韓国保健社会研究院に対する訪問調査を実施する。儒教と仏教が高齢者の自殺を禁止していないことを、学術的に明らかにする。国際シンポジウムで、研究の中間報告を行うことによって、専門家から多くの研究諮問を受けられるようにする。平成24年度の7月には、中国延吉市において、小規模の高齢者福祉専門家会議を開催し、高齢者の生活実態の把握、高齢者の在宅および施設サービスの利用実態などを把握することを計画している。また、中国社会科学院を中心とした関連研究者グループからの専門家意見調査を行う。平成23年度には計画された研究費の全額を使うことができず、繰り越し金が発生している。その理由は、中国の自殺者数を集計する方法を確認するために、衛生部の担当者を対象にした聞き取り調査を行う予定であったが、聞き取り調査を断わられ、調査ができなかったため、その調査費用が執行できなかったからである。その統計の集計方法については、今年度に、中国の関連研究者を対象にした聞き取り調査を通じて確認することを計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究補助員のアルバイト費用を計上する中国社会科学院及び中国老齢科学研究中心への聞き取り調査のための旅費、中国延辺大学での研究報告会を開催費用を計上する韓国保健社会研究院、韓国刑事政策研究院(韓国自殺研究機関)、自殺予防協会への聞き取り調査費用を計上する。国際会議での中間報告のための旅費を計上する
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