研究課題/領域番号 |
23530787
|
研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
朴 光駿 佛教大学, 社会福祉学部, 教授 (30351307)
|
キーワード | 国際情報交換 / 高齢者自殺 / 東アジア |
研究概要 |
中国と韓国の高齢者自殺問題に対する中央政府の取り組みについて考察し、自治体水準では実際どのような取り組みをしているのかについて、現地調査を通じて事実確認と資料収集を行った。中国の場合、東北地方の延吉市を対象にし、高齢者福祉政策の責任部局である老齢工作委員会の主任はじめ関係者と面談し、高齢者の生活状況を調べるとともに関連資料を収集した。また、さまざまな福祉施設に入所している高齢者の生活状況を調べるために、高齢者居住施設、高齢者介護施設、高齢者住宅などを設立主体別(完全民間施設、公的施設、公的設立・民間運営の施設)に訪問し、関係者との面談を通じて高齢者の生活状況を調べた。 韓国の場合、基礎自治体と広域自治体に分けて、高齢者自殺に対する取り組みを調査した。基礎自治体としては、同地域ではもっとも自殺率の高いとされる影島区のドンサン地区を訪問し、住民自治センターの自殺予防事業を確認し、関連資料を収集した。広域自治体としては、自殺予防の管掌部署である釜山市健康増進課を訪問し、課長などを対象にし、ヒアリングを行った。自殺予防のための政策提言に向けて、研究計画通り研究を進めることができた。また、仏教の自殺観については、単著『ブッダの福祉思想』の中で章を設け、研究結果を公表している。初期仏教においては、ブッダは自殺を禁止していたが、それが正しく伝えられていなく、仏教は自殺を容認しているという誤解が東アジア仏教にはあることを指摘した。日本仏教社会福祉学会の基調講演、第17回社会経済国際シンポジウム(中国鄭州市開催)での基調報告に招待され、それらを通じて研究成果を公表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は研究計画通りに進展している。中国高齢者自殺問題については、政府関係者に対する直接ヒアリングが実現していないが、かわりに高齢者自殺統計の取り方については研究者面談を通じて確認している。
|
今後の研究の推進方策 |
中国と韓国の高齢者自殺問題に対して、今までの研究結果の確認を、主に現地調査と関連研究者面談を通じて行う。日本の高齢者自殺については、現在都道府県別自殺率を、国民所得、医療機関、医療人力、高齢者介護施設と介護ベッド数などの要因との関連性を調べる。 一方で、今までの研究結果の公表を行う。公表は学術団体を通じての公表と、一般市民を対象にした研究結果還流とに分けて行う。学術団体を通じての研究成果報告は、東アジアの国際会議や学会での報告を計画している。研究成果還流については、佛教大学四条センターでの市民講座、自殺相談ボランティアを対象にした懇談会を通じて行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の未使用金が約8万円発生しているが、それは韓国と中国での現地調査の経費(宿泊費など)が多少少なくかかったことによるものである。 平成25年度は今までの研究を踏まえ、必要な場合、研究者による諮問、自殺担当政府関係者からのヒアリング、研究成果報告のための国際会議への参加、日本の地域別自殺率の分析とヒアリングのための経費、研究報告書の作成などの経費使用を計画している。研究報告は、2013年7月中国延辺大学で開かれる国際会議での報告が決まっており、そのための経費も計上している。
|