研究課題/領域番号 |
23530790
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
武田 丈 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (30330393)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 参加型アクションリサーチ / フィリピン / エンパワメント / 多文化共生 / フォトボイス / 外国人児童 / ソーシャルアクション |
研究概要 |
本研究では参加型アクションリサーチ(PAR) が文化を超えて国際・多文化ソーシャルワークの領域での調査と実践を統合した手法であることを確立するために、アジアの中の先進国、新興国、途上国の代表として日本、インド、フィリピンの3 カ国で、PhotoVoice、PLA、QC Toolsなどの異なったPAR を用いて調査を実施することを目的としている。特に、コミュニティや参加者のエンパワメント及びソーシャル・アクションの促進への有効性を検証するため、問題解決のためのアクションプラン作成およびその実行度に加え、調査前後でのエンパワメントの度合いの変化を量的指標やフォーカスグループインタビューを用いて検証していくというものである。基礎研究段階として、平成23年度はPAR の各手法に関するもののほか、研究テーマに関する文献、さらにはテキストマイニング、ケース・スタディといった分析方法に関する文献を包括的にレビューし、平成24 年度から開始する国内外での調査の詳細な枠組み及び方法を確立していく予定であったが、調査協力機関の都合で平成26年度に予定していた在日外国人児童を対象にしたPARを実施し、その成果を写真展という形で発表を行った。また、関西圏の研究協力者や実践家とともにPAR 研究会を定期的に開催し、知識の共有を図るとともに、各調査プロジェクトの内容に関するアドバイスを受けた。また、24 年度以降行うフィリピンやインドでの調査準備のため、現地機関と調査内容や方法に関する打ち合わせ、及び事前調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度はPAR の各手法に関するもののほか、研究テーマや分析方法に関する文献に関する包括的にレビューを行い、数本の論文として発表することができた。また、平成24 年度から開始する予定であった国内外での調査は、前倒しで平成23年度に国内でPhotovoiceを用いた調査を実施することができた。また、平成24年度以降に実施する予定で調整中の調査のうち、フィリピンでの調査は具体的な準備を進めることができ、平成24年度中に実施できる見通しである。一方、インドにおける調査は、関係機関と調整を行ったが、まだ具体的な調査計画が完成するまでには至っていない。一方、PAR 研究会に関しては平成23年度に定期的に開催することができ、研究協力者や実践家の間でPARに関する知識の共有を図るとともに、各調査プロジェクトの内容に関する議論を深めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に、前倒しで国内の外国人児童を対象としたPARが実施できた一方、当初平成24年度に予定していたインドにおける、アジア・アフリカ国際奉仕財団が支援しているアグラーのスラム地域のロパムドラ小学校の生徒の母親たちの自助グループに対してPhotoVoice(各参加者に撮影してもらった写真のディスカッションを通して生活問題の把握、生活改善プランの立案・実行、作品の写真展を通してソーシャル・アクションを行う)による調査・実践の準備が予定よりも遅れている。一方、当初平成25年に実施を予定していたフィリピンにおける日本からフィリピンに帰国した移住労働者の当事者団体(バティス女性センター)を対象にしたPARの準備が進んでおり、フィリピンの他団体でも調査実施の可能性がでてきている。こうした状況に鑑みて、平成24年度にはまずフィリピンでのPARを実施するとともに、引き続きインドでのPARの実施の準備を進める。しかし、インドの調査準備が困難な場合には、フィリピンにおける他団体とのPAR、あるいは他国(ネパール)におけるPARの実施に切り替えて実施することも積極的に検討していく予定である。さらに、平成23年度および24年度に実施した研究成果を、平成24年度以降に国際学会などで発表することも計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、フィリピンにおける日本からフィリピンに帰国した移住労働者の当事者団体(バティス女性センター)を対象にしたPARを実施するために、そのための経費(海外旅費、謝金、物品費など)が必要となってくる。また、このフィリピンでのPAR以降のPARの準備を行うため、インド、場合によってはネパールやフィリピンの関係機関と打ち合わせを行うための旅費が必要となる。さらに、研究成果を国際学会で発表するのに必要な研究旅費も必要となる。
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