研究課題/領域番号 |
23530790
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
武田 丈 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (30330393)
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キーワード | フィリピン / ネパール / 参加型アクションリサーチ / エンパワメント / アドボカシー / 移住労働者 / ストリートチルドレン / 外国人児童 |
研究概要 |
本研究では参加型アクションリサーチ(PAR)が文化を超えて国際・多文化ソーシャルワークの領域での調査と実践を統合した手法であることを確立するために、アジア諸国で、PhotoVoice、PLA、QC Toolsなどの異なったPAR を用いて調査を実施することを目的としている。特に、コミュニティや参加者のエンパワメント及びソーシャル・アクションの促進への有効性を検証するため、問題解決のためのアクションプラン作成およびその実行度に加え、調査前後でのエンパワメントの度合いの変化を量的指標やフォーカスグループインタビューを用いて検証していくというものである。 平成24年度は前年度から引き続き研究テーマに関する文献、および分析方法に関する文献の包括的レビューを行うとともに、フィリピンにおいて2つのPARを実施した。この2つの調査は、どちらも日本から帰国したフィリピン女性移住労働者の自助組織を対象としたもので、2種類の調査手法の有効性が確認されており、現在報告書を作成中である。一方、昨年度に実施した日本での在日外国人児童を対象にしたPARに関しては、今年度その成果を論文として発表した。一方、インドでの調査は調整が難航したため、代替案としてネパールでのPARを実施する方向で調整し、予備調査を実施した。 さらに、こうしたPARを用いた研究者・実践家間のネットワーク形成のため、昨年度よりARNJ(Action Research Network Japan)を立ち上げ、情報交換を行ったり、お互いの研究成果をまとめた書籍の出版を目指した研究会を、今年度も定期的に開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画段階では、日本、フィリピン、インドの3か国でPARを1つずつ実施するということであった。予定より前倒しで平成23年度に日本でPARを実施したのに続き、平成24年度はフィリピンで2つのPARを実施することができた。これは、調査の打診を行っている中でバックアップで準備していた研究協力団体からの強い要望もあったことに加え、もともとの研究目的である国際ソーシャルワークにおけるPARの有効性を多様なフィールドで確認していくこととも合致していることによるものである。一方、インドで計画していたPARは研究協力団体の都合で実施が困難な状況になったため、代替としてネパールで実施することに変更し、予備調査を実施することができた。 ここまで実施してきたPARの成果に関しては、報告書にまとめるとともに、論文発表、および学会発表を行うことができた。 一方、PAR 研究会(ARNJ)に関しては平成23年度続き、今年度も定期的に開催することができ、研究者や実践家の間で、PARに関する知識の共有を図るとともに、各調査プロジェクトの内容に関する議論を深めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、平成24年度に実施したフィリピンでの2つのPARの成果を報告書、論文、研究発表で公開するとともに、ネパールでのPARの実施を目指していく。また、これまで実施してきた国際ソーシャルワークにおけるPARの有効性に関する書籍の出版の準備を、PARの先進国である米国の文献や研究者との意見交換などを行うなどしながら、進めていく予定である。具体的には、平成25年度にはフィリピン研究会全国フォーラムおよび、APASWE/IFSW第22回アジア太平洋ソーシャルワーク会議で発表予定である。 また、PAR 研究会(ARNJ)に関しても、定期的に研究会を開催し、参加者の研究成果を1冊の書籍として出版する計画を進めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、ネパールでのストリートチルドレンを対象にしたPARを実施するために、そのための経費(海外旅費、謝金、物品費など)が必要となってくる。 さらに、研究成果を国際学会で発表するのに必要な研究旅費も必要となる。また、2013年8月から研究代表者の研究拠点が1年間米国に移るため、そのための研究設備(ノートブックコンピュータなど)を購入することも予定している。
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