研究課題/領域番号 |
23530791
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
今井 小の実 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (20331770)
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研究分担者 |
寺本 尚美 梅花女子大学, 現代人間学部, 准教授 (50299012)
アンベッケン エルスマリー 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (20510150)
孫 良 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (90299355)
陳 礼美 関西学院大学, 人間福祉学部, 准教授 (40510160)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 福祉国家 / ジェンダー公平 / ケア労働 / 家族政策 |
研究概要 |
申請時には、平成23年度のメインプロジェクトとして、スウェーデンへの視察・調査を計画していた。しかし、計画の見直しが必要となり、2年目に設定していた「各研究者のアプローチにより"ケア"労働についてジェンダーの視点から分析、検討」することを今年度の計画にも組み込むことにした。そして研究会で個別研究の内容を検討し、それを反映した成果を学会等(今井:社会政策学会/ジェンダー史学会、寺本:日本社会福祉学会、アンベッケン:SYSTED 2011)で公開した。また陳は、その成果を平成24年11月ボストン開催の64th Annual Scientific Meeting of the Gerontological Society of Americaに申請、採用が決まっている。国際的あるいは分野をまたがった学会で成果を報告することは、本研究のテーマ上、大きな意義がある。このように個別研究を進めると同時に、6月にはWESTERN MICHIGAN UNIVERSITYの斎藤理香氏(女性史研究)、9月には龍谷大学の大塩まゆみ氏(家族政策)を招き、公開研究会を実施(大塩氏は平成24年度から研究分担者として参画)した。さらに共同研究としては、2012年7月スウェーデンにおけるIASSW、ICSW、FSW 主催によるSocial Work Social Development 2012: Action and Impact Conferenceへの参加を目標にし、社会政策系と家族ケア系の分科会それぞれに成果を申請、応募した3報告すべて採用という成果を得た。国際学会での報告は、研究テーマに適した舞台であり、共同研究の促進に有益なばかりか、社会福祉教育や専門職の団体も主催者であることから、国際的なレベルにおける社会福祉の研究、教育、実践という局面で貢献できると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大きな理由は研究分担者の研究環境の変化である。一名は体調不良により採用決定以降、研究会に参加できなくなったこと、また一名は今年度途中からスウェーデンへの移動が決まったことである。アンベッケンは大学移籍後も研究協力者として共に研究を続けていく意志があり、また研究のフィールドがスウェーデンと日本の比較でもあることから、今後も研究を続けることに、実質上の支障はない。むしろ、申請時にも研究協力者としてあげたサンド氏とも今後はさらに密に連携がとれること、平成24年度のスウェーデン調査の企画、実施の立場からすれば、研究全体にはプラスに働いているとも考えられる。しかし孫良の脱退は、体調不良という理由があり、不可抗力ではあるにせよ、計画遂行に大きな痛手となった。そのため今年度の後半には、孫の不在を埋めるために、家族手当、高齢者ケアの第一人者である大塩まゆみ氏の協力、分担者への承諾を依頼することになった。また、計画の見直しによって、一年目に予定していたスウェーデン調査の可能性を模索しながら、徐行運転のような状況での研究のスタートとなった。全体的な研究計画がなかなか確定できないなか、さらに分担者の一人の体調不良による不在のなかで、暫定的な手段として2年目に予定していた個別研究「各研究者のアプローチにより"ケア"労働についてジェンダーの視点から分析、検討する」計画を同時に遂行していく方針をとった。このような理由から、1年目に予定していた「基礎研究として、各国の"ケア"労働に関するA社会保障・福祉制度、B専門職の現状、C歴史的プロセス(現在の政策の紹介と先行研究の整理)を明らかにする」計画については、その遂行が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の最も大きな研究目標は、スウェーデンにおける学会報告と、視察・調査、それぞれの成功である。実施は7月7日~16日までという限定された期間であるが、その準備、その後の成果報告による作業が、遅れていた研究計画の遂行を取り戻すことにつながると期待している。具体的には、学会報告のために分担者全員で重ねていく共同研究、学会報告の場が有効になると考えている。その過程で、研究テーマである「"ケア"労働の社会化に関する国際比較研究-ジェンダー公平な福祉国家の実現に向けて」のなかでの各自の個別研究の位置づけを確認し、今後、共同研究の一環としてどのように研究を進めていくか、より綿密な研究計画を描くことが可能になるからである。また学会報告の場では、同様の関心を持った研究者たちとの交流が予想されるが、それによって国際比較を進めていく上での有意義な示唆、刺激を得られると考えられる。さらにジェンダー公平な福祉国家のモデルとして設定したスウェーデンにおける機関・施設などへの視察・調査のための事前学習やプランの作成、実行は、最終的に政策提言を行なう際の貴重な経験となる。加えて現地で研究協力者のサンド氏やアンベッケン氏と共同のミィーティングの機会を設けることは、研究の交流をはかると同時に、日本・スウェーデン両国における共同研究を効果的に実施するための体制を構築する絶好の機会となる。このような事前準備、あるいは実施の有益さ以外に、帰国後、学会、視察・調査、共同研究会の成果をまとめ、雑誌に発表することによって、一層の研究の進展を見込むことができる。以上、平成24年度の研究の中心は7月のスウェーデンの学会、調査旅行の事前・事後の準備、成果報告となる。そしてそれら一連の研究活動が、本研究の最大の推進役となることを確信している。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の大半は、スウェーデンの学会参加、視察・調査旅行のために使用する。研究代表者、分担者全員(4人)参加で、8泊10日の予定のため、渡航費用、宿泊費・日当、学会参加費、また視察機関のアレンジを担当し、現地でも共に行動する研究協力者(アンベッケン氏、サンド氏)の報酬、視察機関への謝礼などを含めると総額220万円近くになる。平成23年度の予算を繰越して、次年度の費用にまわすことで対応する予定である。
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