研究課題
英国都市部のホームレスへの社会的包摂を研究課題にして、社会的企業の事業評価枠組みの研究を行った。評価枠組みには直線論理モデルと非直線論理モデルがあり、それぞれが長所と短所を持っている。直線論理モデルとしては、内閣府が推奨するSocial Return on Investment(社会的投資収益率:SROI)の有用性および効果性を検証した。本調査では、SROIは社会投資を呼び込む有力な手段になるものの、データやモニタリングのシステムが欠如することがあり、複雑な作業でもあるために外部の専門家に評価を依頼する傾向があることが分かった。一方、中間支援組織の英国社会的企業(SEUK)はSROIよりも質的手法を重視した評価手法を採用しており、評価手法は必ずしも画一的ではない点を確認できた。質的な評価としては、アウトカム・スター(Outcome Star)方式を検討したが、これは日本の評価システムに対して示唆を得ることができた。特にクライエントの生活実態をホームレスの人たちも自己認識でき、自立のステップに有用な形式となっている。また日本の脈絡では、ビッグイシュー日本が開発したアセスメントシートを検討した。結論として、社会的企業がもたらすインパクトは金銭的価値で表示することには限界があり、社会関係性、ソーシャルキャピタル、地域経済や環境等の視点から評価するのが妥当で、単体のテンプレートはなく、個別組織の活動に対する量的・質的評価法の総合的な組み合わせが有効になるとの結論を得た。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件)
月刊福祉
巻: 第96巻第2号 ページ: 88-91
巻: 第96巻第3号 ページ: 90-93
比較文化研究
巻: 第105号 ページ: 201-210