研究課題/領域番号 |
23530800
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研究機関 | 北星学園大学短期大学部 |
研究代表者 |
藤原 里佐 北星学園大学短期大学部, その他部局等, 教授 (80341684)
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研究分担者 |
田中 智子 佛教大学, 社会福祉学部, 准教授 (60413415)
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キーワード | 貧困 / 知的障害 / 家族 / 家計調査 / 自立費用 |
研究概要 |
八尾市で実施した、知的障害者家族の家計調査では、以下のことが明らかになった。一つは、家計の状態は、子どもの年齢、所属によって、特性が窺えたことでる。乳幼児期の医療や訓練費用、学齢期の送迎費用や社会参加に伴う費用、青年期以降の、余暇活動費用、自立生活のための費用等、支出の傾向が表れた。二つ目は、他の家族メンバーの動向が家計に与える影響が大きいことである。すなわち、母親が障害児のサポート役割に従事するために、就労の場から疎外される。また、子どもの学校や医療機関の事情により、父親の就労も制限されることから、家族メンバーが追加的な収入を得ることや、将来を見越した預貯金をすることができにくい。とりわけ、養育者が高齢期になると、子どもの障害者年金と養育者の年金を合わせて家計を維持することになり、子ども自身の収入が生涯を通して低いことが、家計全体の困窮を招くリスクにつながっていた。 一方、本調査では、大都市圏のサラリーマン世帯、母子世帯、高齢者世帯という、障害児者のいる世帯という要件以外の要素も大きく影響していることが予想され、分析に当たっては地域的な特徴を鑑みることが必要であった。 本年度の研究成果としては、知的障害児を養育する家族が、そのライフステージ全体を通して、子どもの医療・教育・ケア・自立・社会参加に伴う諸費用を支出しているという認識をもつことができた点である。障害当事者の生活を安定させ、QOLを向上するために、種々の公私のサービスや社会資源とのつながりを必要しながらも、その経済的費用を親が担い続けることの負担感が浮き彫りになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査後のデータ分析、考察が予定以上に時間を要したため。また、比較調査の必要から、地域的な特徴のある新たな地域選定を行っているため。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、これまでの家計調査で取り上げることが難しかった、施設入所者、グループホーム入居者の家族を対象として検討する。主として成人期以降の障害者とその家族の経済的問題に目を向けていく。また、家計の状況に対する家族の意識を明らかにするため、質的調査を実施する。合わせて、知的障害者施設の職員の方から協力を得て、入所者の生活実態と経済的状況に対する把握の仕方、支援の在り方などを明らかにする必要がある。家族がめざしている「自立」の方法、形態は多様であるが、それに伴う費用は、誰がどのように支出するのかという問題を、障害者福祉という制度の中で再検討したい。 一方、経済的に著しく困窮している知的障害者の問題は「ホームレス」という形でも表面化していることから、家族の支援が得られにくい知的障害者の貧困について、実態把握することも課題である。また、知的障害が貧困に接近するプロセスを解明し、障害者福祉、公的扶助、社会保障の各領域が横断的に支援する方法を探る。
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次年度の研究費の使用計画 |
関西圏、関東圏、北海道地方都市での聞き取り調査のための旅費30万円、ヒアリング内容のテープ起こし、データー入力、調査協力者への謝金を含めた人件費に20万円、書籍を中心とした物品に20万円を予定している。
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