研究課題/領域番号 |
23530806
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研究機関 | 地方独立行政法人北海道立総合研究機構 |
研究代表者 |
佐藤 孝弘 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, その他部局等, 研究員 (50414256)
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キーワード | 知的障害者 / コミュニケーション / 配慮事項 / 支援者 |
研究概要 |
本研究は、知的障害者の森林での余暇活動の社会的定着のため、福祉サイドに望ましい形の森林活動のあり方の検討を目的とする。平成24年度は、昨年度に連携を図った施設との森林体験活動の継続実施を通じ、1)知的障害者のコミュニケーションの実態把握と評価、2)施設状況に応じた森林活動の試行と評価、3)森林活動支援者の育成条件の探索に取り組んだ。 コミュニケーションに係る分析・評価では、健常者(児童生徒)と知的障害者による森林体験活動時のコミュニケーションの比較に取り組んだ。健常者の活動では指導者から提示された森林に関する課題解決に係るコミュニケーションが主体であったのに対し、知的障害者は「社会的・情緒的領域に係るコミュニケーションが多く、森林活動を通じた知識・体験の獲得に加え、障害者どうし、障害者と施設職員・指導者との交流を重視した雰囲気で活動が進められていると考えられた。 森林活動の試行に係る調査では、昨年度に引き続き、活動への職員からのの評価に統計手法を適用し、活動の企画立案に求められる配慮事項に抽出を試みた。その結果、障害者のための活動には「活動の雰囲気」「障害の重い人の参加」「計画・効率性」「体験の新規性」「体感性」「事前情報の提供」への配慮が求められることがわかった。また、重度の障害者の活動への参加場面の拡大を目的に、一定周波数で電波を発する送信機の試作と探索型の森林活動の試験提供に取り組み、活動への興味関心の増大に一定の効果があることを確認した。 森林活動支援者の育成条件に係る調査では、福祉機関との連携により、障害者(併せて高齢者)への森林体験活動を実施している機関を対象に活動状況や課題に関する聞き取りを行った。活動の充実には、福祉関係者や参加者との情報交換による森林活動へのニーズ(障害状況に応じた内容設定等)の収集が重要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度も研究協力施設との連携を通じ、施設利用者のプライバシーや安全管理を第一に、当初目的とした各研究項目に係る取り組みを予定どおりに遂行できたと考える。平成24年度の北海道においては、冬季の雪害とこれによる交通機関のマヒが頻発し、このために聞き取り調査が十全に行えなかった点が見られたので、最終年度(平成25年度)においては早期からの実施を心がけ、研究目的の達成に努めたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は平成25年度をもって最終年度を迎える。最終年度も初年度・昨年度に引き続き、連携施設のほか道内の知的障害者施設との連携に基づき、各研究項目に係る調査研究の遂行に努める。 知的障害者を対象とした森林体験活動は、現状においては森林林業関係者が担うことが妥当と考えられる。このため、活動づくりにあっては、対象者(知的障害者)の特性や森林に存する素材の特徴等を重視した内容構成が求められるが、こうした人々は知的障害者に接した経験が豊富であるとは限らず、本研究から得られる成果は、今後、森林を福祉関係者のために活用していく上で重要な知見となり、指導者・体験者・支援者にとって参画しやすい森林活動をつくることが可能になる。 また、本研究で得られた成果を基礎に、重い障害を有する人たちへの活動のあり方・特別支援教育の現場における森林・自然教育の進め方・発達障害を持つ子どもたちへのアプローチ等、森林を教育・福祉のために活用する方策の検討が可能になると考えられることから、関連情報の収集に努め、新たな研究課題の立案・実施につなげていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は平成25年度が最終年度となる。研究最終年度においても関係機関との連携・協力のもと、計画的かつ適切な予算執行を常に心がけ、研究目標の十全な達成を目指す。
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