本研究は、知的障害者(以下、利用者と呼ぶ)の森林での余暇活動の社会的定着のため、福祉サイドに望ましい形の森林体験活動(以下、活動と呼ぶ)のあり方の検討を目的とする。平成25年度も引き続き、1)知的障害者のコミュニケーションの実態把握と評価、2)施設状況に応じた森林活動の試行と評価、3)森林活動支援者の育成条件の探索に係る調査を継続した。 コミュニケーションの実態把握と評価では、知的障害者の言語表出能力に着目し、言語的コミュニケーションが活発な利用者・不活発な利用者でのコミュニケーション状況の比較を行った。分析より、①後者は前者に比較し、職員の指示に応じて行動し、意志表明には非言語的手段を用いること。②興味関心を推し量り、直接的な働きかけを行うことにより、コミュニケーションが不活発な利用者の活動への参加が促進されると考えられた。 活動の試行に係る調査では、施設職員による活動評価に統計手法を適用し、活動立案に求められる配慮事項の抽出を継続した。施設職員は活動を①雰囲気、②重度者の参加、③計画・効率性、④新規性、⑤事前情報の提供、⑥体感性によって評価し、①~④は施設状況に関わらず重要視されると推測されたが、⑤事前情報の提供は、重い障害を持つ利用者が多い施設において重視されていた。また、重度者の参加促進には、活動のテーマ(散策型の活動)、参加形態(グループによる参加)、移動(移動が少ないこと)、要求動作(歩く・拾う等の基本動作)の条件を満たす活動づくりが求められると考えられた。 森林活動支援者の育成条件に係る調査では、高等養護学校との連携により、理科教育としての活動の試験提供とこれに対する意見収集を行った。特別支援教育の現場においても活動へのニーズは非常に高く、各施設のみならず、教育現場との連携・情報交換を通じた活動展開の重要性が見出された。
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