研究課題/領域番号 |
23530809
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
今在 慶一朗 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (40359500)
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キーワード | 手続き的公正 |
研究概要 |
1 11月に那覇で開催された日本社会心理学会第54回大会において、前年度に実施した実験の分析結果について口頭発表を行った。本研究では、裁判を模した実験室実験を行い、参加者は被告を弁護する役割を与えられ、裁判員と相互作用する作業を行い、裁判員による詳細な説明と、丁寧な待遇の効果について検討を行った。分析の結果、結果の妥当性に対して説明と敬語表現による直接効果は確認されず、手続き的公正感による効果のみが確認され、手続き的公正感と結果の妥当性の関連性が統計的に有意とされたことから、詳細な説明と丁寧さが手続き的公正感を媒介した上で、当事者に結果を妥当と感じさせることが確認された。 2 当初、ADR機関の探索的な訪問調査を検討したが、東京大学のデータアーカイブに労働審判に関する大規模な調査データが保存されていたことから、これを利用し、裁判外紛争解決(ADR)における手続き的公正に関する分析を行った。ADRの一種である労働審判は,訴訟ではないため,当事者の合意がなければ紛争を解決することはできない制度であるが,その解決率は極めて高い。労働審判の当事者は公正な解決を望んでいることが指摘されているが,公正な手続きを経験することが結果を受容しやすくしていると考えられる。しかしながら,損害の補償を求める労働者と審判に出席を求められることになった使用者では,異なる公正の概念を抱き,異なる公正感によって結果に対する態度を形成していると考えられる。実際に労働審判を経験した者を対象とする調査を実施したところ,労働者側当事者は結果の妥当性を直接審判官に帰属させるが,使用者側当事者は結果の妥当性を審判官によってすすめられた手続きに帰属しやすいことが確認された。この内容については論文としてまとめ、学術雑誌に投稿し、現在審査を受けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、実験を実施し、分析結果を学会で発表した。また、当初計画したADRに関する調査研究についても、大規模なデータを入手し、これを分析し、論文投稿に至った。
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今後の研究の推進方策 |
実験室実験での分析結果から新たな課題意識が生じたため、すでに実施した実験に新たな条件を加えた実験を追加して実施することを検討している。有意義な分析結果が得られれれば、その結果を含めて実験結果を論文としてまとめる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
航空券を早期に予約して旅費を抑制したこと、ADRに対する探索的な訪問調査ではなく、寄託された大規模データを使用して分析を行うことにしたため旅費が抑制されたことなどによる 追加の実験と情報収集のための旅費に使用する予定。
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