研究概要 |
公共事業をめぐる行政と住民の利害対立を、一般市民がマイクロ公正関心とマクロ公正関心の不一致の観点から認知しているかどうか、また公正世界信念の喚起がマクロ公正判断を促進するかどうか実証的に検討するために、ウェブ調査を行った。調査対象者はネットモニターを使用し、北海道、宮城県、東京都、新潟県、岐阜県、大阪府、広島県、愛媛県、福岡県、沖縄県に在住の20歳以上の男女とした。質問紙は4つの部分から構成され各部分の質問項目の概要は次の通りである。質問Aでは、公正世界信念、システム正当化認知、ミクロ公正感、メゾ公正感、マクロ公正感を6件法でたずねた。質問Bでは、居住地域と国への同一性の程度を評価させた。質問Cでは、公共事業紛争の特徴に関する評価を行ってもらった。ここでは、公共事業をめぐる行政と地域住民の対立にはどのような特徴が含まれているか、これまで指摘されてきた紛争構造の認知次元(福野, 2009; Gelfand, Nishii, Dyer, Holcombe, Ohbuchi, & Fukuno, 2001; Pinkley, 1990)をもとに項目を作成した。質問Dでは、第三者の視点から紛争当事者の利害関心を評価してもらった。その際、Brickman et al. (1981)の指摘した3つのマクロ公正原理を公共事業紛争に則して項目化する。3つのマクロ公正原理とは、最小化原理(minimum principle)、下位集団原理(subgroup principle)、平均化原理(average principle)である。今年度は調査実施が年度末になってしまったため、この調査データの本格的な分析は次年度に行う予定である。
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