研究概要 |
公共事業に対する肯定的評価がマクロ公正感に規定され、またこの関係が公正世界信念による調整を受けているかどうか検討するため、全国10都道府県に在住する20歳以上の有権者2,700人(男女各1,350人)を対象に、2014年3月にウェブ調査を行った。平均年齢は44.8歳(SD = 14.0)であった。回答者は、現状の公共事業、マクロ公正感、ミクロ公正感、一般的公正世界信念などの各質問項目に対し、自分の考えにどれくらいあてはまるかを1点(全くそう思わない)から6点(強くそう思う)で評価した。データ分析では、まずマクロ公正感とミクロ公正感の4項目、一般的公正世界信念の6項目について、それぞれ因子分析を行った。公正感については、マクロ公正とミクロ公正に対応する2因子が、一般的公正世界信念については1因子が得られたため、それぞれの項目平均値を尺度得点とした。次に、公共事業への評価に関する2項目の項目平均値を従属変数とした階層的重回帰分析を行った。人口統計学的変数(年齢、性別、年収、学歴)のみを投入したモデル1では、いずれの変数も有意ではなかった。マクロ公正感とミクロ公正感、一般的公正世界信念を、それぞれ中心化して投入したモデル2では、マクロ公正感と一般的公正世界信念が公共事業への支持を高めた。モデル3では、一般的公正世界信念とマクロ公正感、一般的公正世界信念とミクロ公正感の2つの交互作用項を投入した。その結果、マクロ公正感と一般的公正世界信念の各主効果および交互作用が有意となったため単純傾斜分析を行ったところ、一般的公正世界信念を強くもつ人においてのみ、マクロ公正感が高いほど現状の公共事業への支持も強いことが示された。このことから公共事業への支持を規定する要因の1つがマクロ公正感であるとともに、この過程が一般的公正世界信念の強弱によって調整されていることが示唆された。
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