過去に作成していた対人関係の計算モデル(友人関係、恋愛関係)のプログラムのコードの見直しから作業を開始した。新たなオブジェクト指向のプログラミング環境に合わせてプログラムの改作を行った。 見直したプログラムを前提にして、まず友人関係と恋愛関係の成立についてのシミュレーションを試行した。結果は概ね次の傾向を示した。1)モデルに行為者間の距離を導入することにより、友人関係、恋愛関係(デート関係と婚約関係)ともに、近隣でより生じやすくなる。2)友人関係については要求水準の高い友人関係であるほど、恋愛関係についてはデート関係より婚約関係の方が、近隣で生じる傾向は高い。3)恋愛関係の場合、距離の導入によって外見の良い相手を求める傾向は低下し、反対に高い態度類似性が当事者間で結果する傾向がある。4)友人関係にせよ恋愛関係にせよ、中心的位置にある(近隣に多くの相手を見出せる)行為者が態度類似性が高い相手との関係を成立させやすい。 その後、恋愛関係における戦略進化を検討した。シミュレーションモデルの帰結として次の傾向が観察された。1) 社会的望ましさを相手に求める傾向は 望ましさが高い者ほど強い。また、望ましさによるこの相違は、両性にプロポーズ権がある場合に強くなる。 2) 社会的に望ましい者は恋愛における積極性(プロポーズや受諾をする確率)が低下する。またプロポーズ権が不平等なら、プロポーズ権のない側は消極戦略をとりやすい。3) 相手との釣合いを求める傾向は社会的望ましさの高い者ほど顕著である。4)望ましさの釣合いは行為者間の選択の結果としても生じるが、上記の戦略進化の結果としても高まる。 その後、個人における認知の歪みが、恋愛関係のシミュレーションモデルの結果として生じ得るか否かを検討した。この点ではまだ、明確な結果は得られていない。
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