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2013 年度 実施状況報告書

関係性の類型と拡張自己評価維持過程

研究課題

研究課題/領域番号 23530816
研究機関東京大学

研究代表者

村本 由紀子  東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (00303793)

キーワード心理的関係性 / 達成原因帰属 / 国際情報交換(アメリカ合衆国)
研究概要

第一に、本研究が想定する拡張自己評価維持過程に関する多角的検証の一環として、シナリオを用いた質問紙実験を実施した。シナリオ上の登場人物2名の間に、Common Fate状況(両者が同じ成功または失敗を共有し、相手の自尊心への配慮の必要性が低い関係)またはWin-Lose状況(一方が成功、他方が失敗を経験し、相手の自尊心への配慮の必要性が高い関係)を設定し、こうした状況の違いによって、刺激人物が行う原因帰属に対する印象がいかに異なるかを検証した。シナリオでは、(1) 遂行の結果(成功/失敗)、(2) 状況(Common Fate/Win-Lose)、(3) 関係の近さ(親密/疎遠)を操作し、各々の状況下で自己高揚的もしくは自己卑下的な原因帰属を行う刺激人物について、参加者に印象評定を行わせた。主な仮説は以下の通り。(1) Win-Lose状況においては自己卑下的な原因帰属、Common Fate状況においては自己高揚的な原因帰属を行う人物が、より好意的に評価されるだろう。(2) 上記(1)の傾向は、シナリオ中の人物間の関係が疎遠な場合よりも親密な場合に、より顕著に見出されるだろう。現在、データ収集を終え、分析準備中である。得られた結果は、別途実施済の実験室実験の結果とすり合わせて検討する予定である。
第二に、他者の行動の一貫性に関する認知に関して昨年度実施した日・米・インドネシア3カ国間の国際比較実験(スタンフォード大学Dr. Effronらを主研究者とする共同研究)の研究成果を、国際誌に投稿した(審査中)。
第三に、本研究テーマに関連する2つの共同研究(離島漁村をフィールドとした疑似家族に関する研究プロジェクト、集団規範の生成と維持に関する研究プロジェクト)に関して、前者はアジア社会心理学会の隔年大会、後者は日本社会心理学会の年次大会において、それぞれ口頭での成果発表を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、自他の心理的関係性のミニマル・モデルを実験室内に再現し、それぞれの状況下におかれた個人が自己評価維持・高揚の必要に迫られたとき、関係性に応じて異なった心理プロセスでそれを果たすことを明らかにすることを目指している。今年度は、当該のテーマに関わる重要な心理的関係性として、心理的一体感に根ざした関係性(他者の自尊心に配慮する必要性が低い)と、互恵性に根ざした関係性(他者の自尊心に配慮する必要性が高い)に焦点を当て、人々が、それぞれの状況の下で適切と考える自己評価維持・高揚の方略はどのようなものかを検証するための実験を立案・実施することができた。また、前年度までに手がけたいくつかの共同研究についても、その成果を学会発表や投稿論文のかたちで整備する段階に進むことができた。以上より、現在までのところ、本研究はおおむね当初予定通りの成果を生んでいると考えている。

今後の研究の推進方策

実施済みの実験データの分析を進め、他者との心理的関係性に応じた自己評価維持・高揚の方略について、モデルの検証と修正、精緻化を図りたい。
大学生のみならず、さまざまな世代にわたる広範囲のサンプルに対して、関係性モデルの妥当性を確認するための調査研究を実施し、知見の一般化可能性を検証したい。
さらに、申請者が別途従事している共同研究(離島漁村をフィールドとした疑似家族に関する研究プロジェクト、集団規範の生成と維持に関する研究プロジェクト)との連携を引き続き強化したい。

次年度の研究費の使用計画

平成26年度に一般サンプルを対象とした社会調査を実施することを計画しているため、これに備えて、平成25年度受領額の一部を繰り越したものである。
一般サンプルを対象とした社会調査実施のための費用を支出する計画のほか、国内外での学会における成果発表等のための出張旅費が必要となる見込み。また、実験室実験のセットアップに必要なコンピュータ関連機器、データ分析のための統計ソフトの購入等も予定している。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2014 2013

すべて 学会発表 (3件) 図書 (2件)

  • [学会発表] 「規範」研究の方法論としてのマイクロ・エスノグラフィーの可能性 (ワークショップ話題提供)2013

    • 著者名/発表者名
      村本由紀子
    • 学会等名
      日本社会心理学会第54回大会
    • 発表場所
      沖縄国際大学 (沖縄県)
    • 年月日
      20131102-20131103
  • [学会発表] 規範の測定と可視化への再挑戦(2):「個人の認知」を超える試み (ワークショップ企画)2013

    • 著者名/発表者名
      木下冨雄・山口裕幸・村本由紀子
    • 学会等名
      日本社会心理学会第54回大会
    • 発表場所
      沖縄国際大学 (沖縄県)
    • 年月日
      20131102-20131103
  • [学会発表] A socio ecological approach to a quasi-family relationship in a remote island in Japan (個人口頭発表)2013

    • 著者名/発表者名
      Yukiko Muramoto & Yumi Endo
    • 学会等名
      10th Conference of Asian Association of Social Psychology
    • 発表場所
      Universitas Gadjah Mada, Yogyakarta (Indonesia)
    • 年月日
      20130821-20130824
  • [図書] 文化 (唐沢かおり・編 『新社会心理学:心と社会をつなぐ知の統合』)2014

    • 著者名/発表者名
      村本由紀子(分担執筆)
    • 総ページ数
      218
    • 出版者
      北大路書房
  • [図書] 実験社会心理 (社会調査協会・編 『社会調査事典』)2014

    • 著者名/発表者名
      村本由紀子(分担執筆)
    • 総ページ数
      920
    • 出版者
      丸善出版

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公開日: 2015-05-28  

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