研究実績の概要 |
本研究は、関係性の違いが自己評価維持の方略にいかなる違いをもたらすかを理解する目的で行われた。(1) 33項目の関係性尺度に対する日米大学生の回答から通文化的な7つの構成要素を抽出し、これらの組合せによる3つの典型的な関係性タイプを同定した。(2) 他者との関係性に応じた達成原因帰属の様相を質問紙調査によって検討した。(3) 関係性のミニマル・モデルを実験室に構築し、各々の関係性の下でいかにして自他の自己評価維持が果たされるかを検討した。(4) 本研究が検討してきた関係性モデルの妥当性を現実場面の文脈で検討するため、正社員を対象としたインターネット調査を実施し、上司・同僚との関係性の様相と、職務に関わる自己評価や組織行動との関連を検討した。 平成26年度は主として、上記 (3)に関わる実験室実験について結果の再分析・考察を行うとともに、(4)の調査を実施した(結果分析中)。実験参加者は2名一組で実験室に入室し、独りで課題を行った後、成績(成功/失敗)のフィードバックを受けた。半数は他者の自尊心への配慮の必要性が低いCommon Fate条件、もう半数は配慮の必要性が高いWin-Lose条件に割り振られた。その後、参加者は自分の成績に関する原因帰属などの尺度に回答した。その結果、回答内容が他者に知らされないとわかっていても、Win-Lose条件の参加者は自己卑下的、Common Fate条件の参加者は自己高揚的な帰属を行う傾向があった。その他、他者との心理的距離(近接/疎遠)の効果も見られた。これらの結果は、拡張自己評価維持モデル(Beach & Tesser, 1995)及び間接的自己高揚モデル(Muramoto, 2003)に照らして解釈された。この他、関連する共同研究の成果を日本社会心理学会の学術誌に投稿した。
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