研究課題/領域番号 |
23530822
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研究機関 | 福岡教育大学 |
研究代表者 |
植村 善太郎 福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (20340367)
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研究分担者 |
河内 祥子 福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (70452703)
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キーワード | 公正感 / 学校 / 保護者 / 家庭環境 |
研究概要 |
前年度までの研究によって、一般の人々が、学校の運営で不公正を感知しやすい状況として、特に、いじめやけんかといった、人間関係に関わる対応の拙さがあることがわかった。さらに、「評判のよくない先生が自分の子どもの担任になる」といった、運営上避けられない事象についても、不公正を認知する人は一割程度存在し、受益者側の公正認知の難しさがうかがわれた。先行研究に基づいて、手続き的な公正(Leventhal, 1980)が、学校に対する公正感にとっては特に重要であると考えてきた。しかしながら、前にあげた「評判のよくない先生が自分の子どもの担任になる」といった状況は、手続きの適切性よりも、その結果の受容可能性、すなわち分配的公正(Leventhal, 1980)に重点がある状況とも解釈することが出来る。特別支援教育に関わる指導やガイダンス、あるいは不登校への対応といった状況は、苦情の対象として多くあがってくることが知られているが(京都府総合教育センター, 2007)、これらの状況においても、手続き的な公正だけでなく、分配的公正が、不公正感の認知に大きく関わっていると推測された。こうした先行研究および実際の苦情内容の検討の結果、学校に対する公正感の構成を考えるためには、手続き的構成に関わる調査項目に加えて、分配的公正に関わる調査項目が必要であることが明らかになった。 次に、公正感を認知する保護者側の要因を探索した。例えば、汚職に対する許容度を検討した研究では、中等教育以上の教育を受けた人は許容度が低いことが明らかとなっている(竹中,2011)。また、対象と自己との類似性が、対象の責任の大きさの認知に影響することが知られている(Thornton, 1984)。こうした研究から、認知者としての保護者側の要因として、学歴や教員との類似性の認知が、公正感認知と関わる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまで、手続き的公正を中心的に検討する調査デザインを考えていたが、公正感が特に問題となるような学校での状況を検討する中で、分配的公正を考慮に入れた調査デザインが必要になることが明らかになった。その結果、学校において公正感が焦点となる状況の整理を再検討するとともに、項目内容を見直すこととなった。 同時に、保護者側の要因として検討に含めるべき要因がいくつか見つかり、これらの質問項目を準備する必要に迫られた。 こうした調査のための準備に想定よりも時間がかかり、調査の実施に停滞が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに実施した調査結果および先行研究に基づいた概念の整理と項目の準備を基に、量的な調査を実施する。当初、計画段階で予定した公正感の構成過程に関する実験については、調査によって明らかになる可能性があるので、調査結果を検討して、計画通りの実験を実施するか、他の要因の影響を検討するための調査・実験を行うかを選択する。 これらの研究を進めることで、保護者の学校に対する公正感の認知の構成を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
社会人を対象としたWEB調査の実施を計画していたが、調査内容の再検討が研究の過程で必要となった。関連した先行研究などの資料を研究し、調査内容を吟味することに想定よりも多くの時間が必要となり、計画していたWEB調査の実施に至らなかった。その結果、調査の実施費用や、その後の資料整理のための謝金費用、そして成果の発表費用が使用されず、次年度使用額が生じた。 社会人を対象としたWEB調査を、年度前半に実施する。また、それに伴って、資料整理のための謝金、そして成果の発表費用として使用する。その他、資料収集や資料の整理に要する消耗品などのために使用する。
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