研究課題/領域番号 |
23530825
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研究機関 | 青森大学 |
研究代表者 |
渋谷 泰秀 青森大学, 社会学部, 教授 (40226189)
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研究分担者 |
渡部 諭 秋田県立大学, 公私立大学の部局等, 教授 (40240486)
吉村 治正 奈良大学, 社会学部, 准教授 (60326626)
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キーワード | 高齢者 / リスク志向性 / 生活の質 / 項目反応理論 |
研究概要 |
本年度は、本調査の年度であり予備調査の結果を用いてトリミングした本調査用の調査票を用いて、平成24年8月から本調査の準備に取り掛かり、10月より本調査を開始した。本調査は、前年度の報告書にも記載したがランダムサンプルではなく、高齢者を活動レベルが高いグループと活動レベルが低いグループの2群に分類して行った。活動レベルが高いグループは町内会や一般の高齢者グループで活発な活動を行っている高齢者を町内会及び高齢者グループの幹部の方々と相談して募った。およそ220名の協力者が得られた。また、活動レベルが低い高齢者グループは介護予防教室に参加した約60名の協力を得て、データを収集した。調査票の項目数が非常に多かったこと、更にはパイロット調査や他の助成金で行った同様の調査においてランダムサンプルを用いた場合の回収率、及び回答率が低かったことを受けて、謝金経費がかなり多くなるが、研究計画で意図したサンプルの確保のためにターゲットのグループを想定して調査参加者を募った。 項目反応理論や共分散構造もデルを用いた分析は今後行うが、既に幾つかの興味深い結果が得られた。高齢者はヒューリスティックスを多用して意思決定を行っており、ヒューリスティックスと詐欺犯罪被害傾向との間には有意な関係が見られた。ヒューリスティックスを意思決定に多用したグループでは、生活の質が低い傾向が見られた。活動レベルが低い高齢者グループでは、活動レベルが高いグループと比較して生活の質は低く、自己効力も有意に低い傾向が見られた。リスク志向性は活動レベルが高い高齢者グループで高い傾向が見られたが、同一グループ内ではリスク志向性が低いことは生活の質の向上に関連していることが判明した。今後は、項目反応理論や共分散構造分析などの高次な分析を行い、学会発表及び論文発表を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は社会調査研究であるため、研究の達成度の重要なポイントは、調査票の妥当性及び信頼性、十分なサンプル数の確保、適切な回収率及び回答率の確保、などである。上記の項目の全ての面で、研究デザインで意図した達成度に到達していると考えている。ランダムサンプルではなく、特定集団を基にしたサンプルを用いたが、このことは、高齢者の活動レベルが高いグループと低いグループの両グループに焦点を合わせることにより、高い回答率の確保やサンプル特性の明確化を達成できたと考えている。 また、得られた結果からはリスク志向性が生活の質に影響を及ぼしていること、その影響は高齢者の活動レベルと相互作用がある可能性が示唆されたことなど、興味深い視点が得られた。また、初期分析の結果から、得られたデータの変数間における共分散構造は、今後予定されている項目反応理論及び共分散構造モデルを用いた詳細な分析において、我々が考えてきたモデルフィットの検証に有効であると期待している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、パイロット調査及び本調査が終了しており、今後は詳細な分析を行い、日本心理学会、行動計量学会、認知心理学会、認知科学会及び統計関連学会連合大会などで発表する予定である。 更に、データ分析に基づいて、年度中に論文を最低2本作成する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
学会発表の旅費、データ分析に伴う消耗品費、図書費などに3名の共同研究者で約50万円の経費を計上している。繰越の研究費が残っている分担者もいるが、今年度は学会発表など活動を活発に行う予定であるため、基金化された経費は有効に使用できると考えている。
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