研究概要 |
私たちはいろいろな形で他者の心の状態の推測している。他者が自分の心のありさまを明言しなくても、他者が何を考えているかを予想し、自らの行動、判断にその情報を利用しているだろう。こうした非明示的な手がかりなしの他者理解は「察し」とされ、文化に生きるために必要な能力である。また、「察し」とは、文化的自己観を用いて対人知覚をする傾向のことである。人の気持ちを理解するためには、文化的自己観を前提として、対人的理解力が形成されていることは、近年の文化心理学の知見から予測できる。本研究では、人の気持ちを察する傾向を測定し、この傾向が高いほど文化固有の人間関係のモデルを用いがちであるという仮説を検討することを目的とした。具体的には、察し機能尺度を作成し、文化的自己観と関連する実験課題との関連をみることを検討した。 研究1.察し機能尺度の作成:他者認知として、他者理解の基盤となる心の理論尺度(Yoon, et al, 2010など)、他者の心を読む能力としてEmotional Intelligence(Salovey & Myer,1990)尺度,思いやり尺度からなる尺度を作成し、日本人大学生120名に実施し、その妥当性を検討した。この察し機能尺度と文化的自己観尺度との相関をみたところ、日本では相互協調的課題とで有意であった。 研究2.文化的課題実験:文化的対人感情知覚課題であるMesquita& Masudaの実験について、今年度はMasudaの専門的なアドバイスを受け、日本人大学生156名に実施した。また、新しく開発された他者をプライミングしたフランカータスクと同様の手続きで日本での追試を行い、文化的傾向と察し能力との関連を検討した。研究の成果発表を論文として投稿する予定である。
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