研究概要 |
社会的比較の観点から痩身願望の基底にある心理的メカニズムを引き続き検討した。前研究では(守安・諸井, 2012)比較他者を細かく設定したが,今回の研究では「同性同輩」を比較他者とした。本研究の主目的は,先行研究で痩身願望の影響因として認められた対同性同輩比較が身体全体の比較を指すのか,身体の特定部位比較の反映であるかを明らかにすることであった。女子大学生を対象に質問紙調査を実施した(N=190)。 今回の研究では,回答者に詳細な身体部位比較と部位全体の比較(単一項目評定)を求めた。詳細な部位比較については因子分析に基づいて下位尺度を構成した。一連の重回帰分析によると,容姿,体つき,装い,外見,体型という言葉を用いて測定した対同性同輩比較は,顔部位の比較にかなり依存していた。対同性比較尺度の作成意図は,身体全体の比較の測定であった。下位尺度得点を対象とした分析では,身体全体比較の影響力は 顔全体・胸比較とほぼ同等でしかなく,単一項目評定による分析では身体全体の影響は認められなかった。 これらの結果は,容姿,体つき,装い,外見,体型という言葉を用いて同輩の女子学生との比較を求めると,回答者は自分自身と同輩の女子学生の顔部位の様相を思い浮かべながら回答していることを示している。 身体の詳細な比較は,①対同性同輩比較との比較,②比較対象が身体という点から,他者との一般的な比較傾向を表す社会的比較志向性よりも,対同性同輩比較と強い関連を示すはずである。単一評定項目ではこの予測が支持されたが,下位尺度得点で分析した場合には支持されなかった。さらに,平均値比較で,2種類の得点ともに(単一評定項目:脚全体,下位尺度得点:腿),脚部は最も比較対象とされる部位であった。この部位は,重回帰分析においても対同性同輩比較の有意な規定因であった。以上の結果についても今後精緻に検討すべきであろう。
|