研究課題/領域番号 |
23530837
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
土田 昭司 関西大学, 社会安全学部, 教授 (90197707)
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キーワード | リスク認知 / 中華人民共和国 / 大学生 / 経済格差 / 社会調査 / 質問紙調査 / 国際研究者交流 |
研究概要 |
H24年度には、南京大学において開催された中国リスク研究学会大会に合わせて南京大学の協力研究者Zhaik教授を土田が訪問して、社会調査の実施方法と調査内容について最終的な打ち合わせを行った。 中国における調査実施大学として、中国リスク研究学会大会において次の各大学関係者に依頼を行い、すべての大学から基本的に応諾が得られた。すなわち、経済的に発展が最も進んでいる中国主要都市の大学としては、南京大学(南京)、北京化工大学(北京)、同済大学(上海)を対象とすることができた。経済的に発展がそれほどは進んでいない中国内陸部にある都市の大学としては、雲南大学(昆明)、西北民族大学(蘭州)、西安電子科技大学(西安)、東北師範大学(長春)を対象とすることができた。 社会調査の調査票は、まず、日本語版を作成して、次に中国語版に翻訳を行った。さらに、南京大学の協力研究者が質問を2問追加した。主な質問項目は、次のとおりである。 A:15のリスク対象(例:「化学物質」「放射能」「車による騒音や排気ガス」「地震」「水不足」「生活習慣病」「経済格差」)それぞれに対する不安度。B:15のリスク対象それぞれを自己努力で低減できるかの認知。C:15のリスク対象それぞれを多くの人々の協力で低減できるかの認知。D:15のリスク対象それぞれの被害を抑えるための機関・団体が有効に機能しているかの認知。E:基本的価値観(脱物質主義、地球環境、科学技術、他者信頼)。F:自国に対する集団実体性認知、G:ゼロリスク認知、H:相互依存性・相互独立性、I:face項目。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画では、H24年度秋に中華人民共和国の経済発展地域と内陸部、それぞれ3校以上の大学において、大学生を対象としたリスク認知についての質問紙調査を実施し、合わせて、その対照群として日本の複数の大学において同様の質問紙調査を実施して、データの収集を完了する予定であった。しかしながら、尖閣諸島の領有権問題において、H24年9月11日に日本政府が尖閣諸島を国有化したことによって、中華人民共和国における対日感情がきわめて悪化した。研究協力者である南京大学のZhai教授と相談の上、この状況において調査を実施しては、不測の事態が発生する可能性もあり、仮に実施できたとしても調査結果に意図せざる大きなバイアスがかかる可能性も否定できなかったことから、H24年度中に中華人民共和国において質問紙調査を実施することは見送ることとした。H24年度には、南京大学において開催された中国リスク研究学会大会に土田が出向き、Zhai教授とともに調査を実施してもらえる大学関係者への協力の確約を得るにとどめて、実査はH25年度春に実施することとした。
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今後の研究の推進方策 |
H25年5月6月に中華人民共和国の7大学[南京大学(南京)、北京化工大学(北京)、同済大学(上海)、雲南大学(昆明)、西北民族大学(蘭州)、西安電子科技大学(西安)、東北師範大学(長春)]において、各大学200-300名の大学生(計1,400-2,100名)の大学生を対象に、リスク認知についての質問紙調査を実施する。実施においては、可能な限り研究代表者が現地に出向いて地点による実施バイアスが出ないように努める。また、同時期に対照群となる日本の大学[関西大学(大阪)、京都産業大学(京都)、静岡大学(浜松)、北星学園大学(札幌)など(いずれも予定)]において同様の質問紙調査を実施する。 H25年8月に、大阪において研究協力者である南京大学Zhai教授を招いて調査結果分析の検討をおこなう。 H25年12月に、米国リスク研究学会において成果発表をおこなう。内外のリスク研究ならびに社会心理学の専門雑誌に論文投稿する。論文投稿先としては、Risk Analysis、Journal of Risk Research、Asian Journal of Social Psychology、社会心理学研究、心理学研究などを予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度(H24年度)には、尖閣列島の領有権問題などによって中国における対日感情が極端に悪化したため、残念ながら、予定していた中国の大学生を対象とする質問紙調査を実施することができなかった。そのため、繰越金(1,210,790円)が発生した。 次年度(H25年度)には、中華人民共和国の7大学ならびに日本の複数大学における大学生を対象とする質問紙調査を実施するため、質問紙の印刷費、質問紙の郵送費、調査実施補助者への謝礼、データ整理入力者への謝礼、および、研究代表者が中華人民共和国へ渡航滞在する費用と日本における調査実施地点への交通費を使用する。 調査分析検討会議に南京大学Zhai教授を招へいするため日本への渡航滞在費を使用する。 研究代表者が米国リスク研究学会に出席発表するための渡航滞在費を使用する。 論文投稿費用を使用する。
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