昨年度まで改稿を繰り返してきたレヴュー論文について,2016年度中の公表の目途をつけることとした。本レヴューでは,ファイナンスリテラシーの概念を洗練することで,近年,散見されるようになった主観的なファイナンス知識というメタ認知レベルにとどまらず,新たに批判的思考を含めた家計運営の在り方について検討する必要性を指摘された。具体的には,Ennis(1987)や平山・楠見(2004)などの批判的思考研究を参照しながら,今後進められていくこととなり,これらの課題点は,継続課題において,引き続き検討が進められることになる。 さらに,昨年度までに使用許可を得ていた,ファイナンシャル・リテラシー尺度を用いて,20代から60代までの男女およそ1000名を対象としたインターネット調査を実施した。調査結果については,現在鋭意分析中であるが,この調査データに基づき,現代日本における成人期男女のファイナンシャル・リテラシーの横断的な発達の様相が明らかになるとともに,ファイナンス行動やファイナンス満足感との関連,さらには,新たなファイナンス効力感の尺度が開発される見込みである。 また,従来の研究成果について,日本発達心理学会において,「家計管理・運営に関する夫婦間相互調整と結婚満足度」を発表(2016年5月予定)するほか,夫婦に関する研究の実績としては,柏木惠子・平木典子(編)『日本の親子』に「親としての発達」を寄稿するとともに,立命館大学の宇都宮博教授とともに『夫と妻の生涯発達心理学』の編集を行い,担当章において,夫婦研究において家計管理に着目することの重要性を指摘した。
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