研究課題/領域番号 |
23530845
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
山口 陽弘 群馬大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (80302446)
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キーワード | 教職大学院 / 修了生調査 / ルーブリック / 真正の評価 |
研究概要 |
H24年度においては、教職大学院の修了生調査を継続的に行った。修了生調査をするにあたって、全員へのアンケート調査は郵送で行い、その分析結果を群馬大学教育実践研究紀要第30号に本学新藤慶准教授と共にまとめている。 なお、より質的な深いレベルでの調査を本研究では最終的にまとめることを意図しており、修了生の中で修了時に「成績優秀者」として選出された者を中心にインタビュー調査を継続的に行っている。 「成績優秀者」について簡単に述べると、群馬大学教職大学院では、修了時において課題研究発表会を公開で行っている。この発表会は公開形式で行っており、県内外の関連する小中高等学校への案内を出し、県教委関係者もお呼びして、約百名程度のオーディエンスの中で、二年間の成果を簡潔にM2修了生たちが発表していくものである。彼らへの評価を指導教員のみで終わらせることなく、教職大学院の専任教員全員と客員教員すべて、さらに教職大学ではない教育学部修士課程長、大学外の県教委からの代表者、保護者代表なども含めて全体で評価し、成績最優秀者を当該学年で決定している。以上の選出法は、まさに最近の教育学の領域でも目標とされている「真正の評価」に近いものになっていると本学でも自負するものである。 こうした「成績優秀者」は、いわば教職大学院での学びの「正事例」であり、彼らをを中心としたインタビューでは、二年間の教職大学院での学びが、現在の教職業務にどのように生きているか、またその学びをさらに充実させるためにはどうすればよいかというための建設的な提言が得られた。その提言等を最終的に教職大学院でのルーブリックにまとめていく作業を行い、H25年度に本学紀要等にまとめていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
いわば広く浅いレベルでの修了生調査(アンケート調査)の分析等はすでにH24年度中に群馬大学教育実践紀要にまとめており、その点でおおむね順調に進展していると言える。 アンケート調査で分かったことを以下に述べると、大学院内での学びを修了後に振り返ったときに、本学教職大学院への評価がおおむね高かった。特に大学院カリキュラムでの「実習」や「授業」などはいずれも肯定的な評価を与えている者が多かった。 ここで着目すべき点は、「同学年での交流」には若干の評価のばらつきがみられたことである。つまり、この「同学年での交流」に肯定的な評価を与える者とそうでない者とが相対的にはばらつきがあった。そして、この肯定的評価を与える者が実は「成績優秀者」であったり、また本学での学びが今にも有効であると述べているのである。 以上をまとめると、教職大学院での学びはみえるレベルでのカリキュラムの効果だけではなく、「みえないカリキュラム」の部分が効果を発揮しているのではないかという作業仮説が得られた。つまり、同学年内で現職の先生とストレートマスターという異なる立場の者との交流を積極的に生かせる院生、あるいは自分以外の同級生が課題として研究していることを協同で学ぶことで、自分の学びに加えていくことができる院生こそが、二年間を充実させることができるのではないかという作業仮説である。 この仮説はインタビュー調査でのほぼ確証されつつあり、これらの点から、おおむね研究は順調に進展していると言えるだろう。
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今後の研究の推進方策 |
H25年度は研究の最終年度になり上記で述べてきた作業仮説を検証することを行うつもりである。具体的にはすでに行っている成績優秀者へのインタビュー調査の分析を行いつつ、まだインタビューをできていない修了生がいるので、その調査を早急に行う予定である。また最低限度のアンケート調査も行う予定である。 これらの研究成果は本学紀要を中心にまとめて発表する予定である。なお、修了生アンケート調査は自己評価に限定されているため、修了生が現在勤務している勤務校での管理職へのインタビュー調査も予定している。つまり他者評価としての教職大学院修了生調査である。これは修了生への負荷を考えても、やはり正事例たる「成績優秀者」に絞って、かつ管理職の中でも許可を得られた方に限定して研究調査をすすめていく予定である。 なお、こうした本学大学院での教育効果の研究は、認証評価のためのエビデンスとしても極力活用していくつもりである。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究最終年度においては、H24年度よりもインタビュー調査やアンケート調査に関わる費用がやや多めにかかることを想定して、僅か(2万円弱)であるがH24年度の研究費をH25年度にまわすことにした。 インタビュー、アンケート調査のための費用や消耗品などに使用するとともに、これまでの研究成果の発表、他大学教職大学院との情報交換のための学会出席のための交通費等に使用する予定である。
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