研究課題/領域番号 |
23530847
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
岩田 美保 千葉大学, 教育学部, 准教授 (00334160)
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キーワード | 他者理解 / 社会的文脈 / 相互作用 / 言語行動 / コミュニケーション / 感情 / 家族 / 仲間 |
研究概要 |
本研究の大きな目的は、「幼児期から児童期中期にかけての他者理解の発達について社会的相互作用と言語的側面に着目して調べること」である。上記の目的をふまえ、本年度は、多様な社会的文脈において、子どもが自他の感情言及を含むやりとりをどのように行い、そうした感情理解を深めていくのかについて特に着目し、以下の検討を行った。 ①家族間での感情経験に関するやりとりの分析:昨年度からの分析で得られた幼児・児童を含む家族間の感情経験についてのやりとりに関わる研究成果を学会論文(日本家政学会誌:「母子4者間・父母子5者間で語られるネガティブ・ポジティブ感情」2013)や学会発表(日本心理学会、日本家族心理学会)を通じて発信した。現在は、上記とは異なる視点から、多様な家族間のやりとりに着目した検討をさらに進めており、その分析結果の一部もまもなく発信予定である。また新たな家族のデータも現在プロトコル化の作業に入っている。 ②幼稚園・小学校での観察の施行と分析:昨年度までの幼稚園・小学校で得られた観察データに基づき、園での仲間間での感情言及を含むやりとりに関わる縦断的な研究成果を日本保育学会(2012)にて、また、高学年児童が、葛藤状況に関わる学級での話し合いにおいてネガティブな感情をどのように表明し、やりとりを行っているかについての研究成果を日本教育心理学会(2012)、日本発達心理学会(2013)にて発表し、一部を千葉大学教育学部紀要(2013)に報告した。 今後は、園・小学校等での観察を続行しながら現在進行中および未分析のデータ分析を行うとともに、これまでの研究成果を統合し、幼児期から学童期にかけての家族や仲間等、社会的文脈における他者理解プロセスについてさらに検討を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は「幼児期から児童期中期にかけての他者理解の発達について社会的相互作用と言語的側面に着目して調べること」を大きな目的としている。これまで、家庭や園、小学校での家族や仲間とのやりとりについて縦断的観察データを収集し、分析を行ってきた。現段階ではそうした多様な社会的文脈において、子どもが自他の感情言及を含むやりとりをどのように行い、そうした感情理解を深めていくのかについての研究成果が積みあがってきている状況であり、これまで(2012年4月~2013年3月)、学会での発表(日本心理学会、日本教育心理学会、日本発達心理学会、日本家族心理学会、日本保育学会)や学会誌(日本家政学会誌,2013年第2号)、大学紀要(千葉大学教育学部研究紀要,2013年第61号)への掲載を通じてそれらの成果を公表してきた。また、他のデータについても、現在分析が進行中であり、一部はまもなく発信できる予定である。こうしたことから、現在のところ、当初の目的に沿った研究活動が概ね順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまで行っている園や小学校等での縦断的・横断的観察をさらに続行するとともに、現在進行中および未分析のデータ分析(小学校や保育園、他の家族に関わるデータ等)に着手する。また、分析が進む中で、足りないデータが生じた場合は、特定の学年等について観察等を行う可能性も考えられる。こうした研究経過については逐次、日本教育心理学会や、日本発達心理学会等にて報告し、当該テーマについてさまざまな意見交換や資料収集を行う予定である。こうしたことを通じて、研究の最終年度に向けて、これまでの研究成果を統合し、幼児期から学童期にかけての家族や仲間等、社会的文脈における他者理解プロセスについて最終的な仮説を提示していきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、本研究の映像データや音声データの分析のための費用(アルバイト、メディア類等)と学会等における研究成果の発表のための費用、また、文献資料のための費用が中心となる予定である。
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