研究概要 |
本年度は、他者理解に関わるやりとりとして、家庭・園・学校場面での社会的相互作用を軸とし、観察及び検討を行った。 ① 3世代を含めた家族の感情会話の分析:昨年度までの分析で、日常的な会話メンバーの違い(母子間・父母子間)による感情会話の多様性が示唆された(岩田、2013、日本家政学会誌、等)。本年度は、その結果をふまえ、異なる家族間での感情会話の多様性についてさらに示唆を得るために、小学生と祖母を含む3世代の家族間の感情会話の検討に着手した。その結果、3世代の会話では、ポジ感情に関わる側面が強調されるなど、核家族間とは異なるやりとりの特徴がみられる可能性が窺われた(The 7th conference of the International Academy of Family Psychology,2013において発表)。現在は、ここでの結果をふまえ、多様な家族間のやりとりに着目した検討をさらに進めている。 ② 幼稚園での観察の施行と分析:これまでに引き続き、仲間間での感情言及を含むやりとりに関わる縦断・横断的な研究成果を日本保育学会(2013)、日本教育心理学会(2013)、日本発達心理学会(2014)にて報告し、感情が語られる仲間遊びの文脈が年齢段階によって変化していく可能性を指摘した。 ③ 小学校での観察の施行と分析:低学年(2年)及び高学年(5年)の葛藤状況に関わる学級での話し合いでのやりとりの分析を行い、ネガティブな感情を含む意見表明のあり方が低学年と高学年では異なり、高学年児童ではより明示的にそうした意見表明がなされるようになる可能性について指摘した(岩田、2014、千葉大学教育学部紀要)。 上記の研究より、さまざまな社会的やりとりの中で子どもが自他の感情にどのように言及し、それらについての理解を深めていくかについて、新たな視点もふまえながら研究が進んできている。今後は、これらの結果をふまえ、さらに詳しく検討を行っていく必要がある。
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