まず,記述能力の縦断的変化についての検討を進めた.これまでの研究で懸念された学年団の影響について検討したところ,その効果が確認された.つまり,児童生徒の学年(年齢)という発達的要因も記述能力や読解力に影響するが,それ以外の要因として,その学年の児童生徒に対し,どのような指導がなされているかという教育的要因も,記述能力や読解力の獲得に大きく関与することが確認された. また,研究内容としては過去の年度からの継続となるが,全国の高校入試の国語問題で,どのような読解問題が出題されているかを調査し,出題傾向,解答形式,採点方式などについて整理し,その結果を学会誌上で公表した. 次に,英語読解力について,キーセンテンスと錯乱枝との関連についての検討を行った.具体的には,キーセンテンスと重複する語を含む錯乱枝の選ばれやすさを測定した.その結果,能力低・中群において,キーセンテンスと重複する語を含む錯乱枝が選ばれやすいことが確認された.また,キーセンテンスを特定した上で文章を読解するタイプの問題においては,能力高群において,キーセンテンスと重複する語を含む錯乱枝が選ばれやすいことが確認された. なお,キーセンテンスの内容については,概念,事実,手続き・過程・背景,原理,意見の5カテゴリ,キーセンテンスの文章中での散らばり方については,一内容を踏まえる,一段落を踏まえる,複数段落を踏まえる,文章全体を踏まえるの4カテゴリを設定し,それぞれのカテゴリの組合せを実現する問題を作成して,条件設定に偏りがないようにテストを実施した.
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