研究課題/領域番号 |
23530852
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
弓削 洋子 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (80335827)
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キーワード | 教師 / 指導性 / 学級の課題状況 / 目標の一致 / 学習意欲 / 連帯性 / 児童認知 |
研究概要 |
教師の2つの指導性(‘引き上げる’‘受け入れる’)統合を具体化した指導方略「あたたかく課題を突きつける」が機能する要因として,学級の課題状況に注目し,以下の作業をおこなった。 まず,平成22年度科研費研究課題(課題番号20530593)にて作成した小学校教師評定用の指導行動評定質問項目の児童評定版を作成するため,予備調査を小学3年から6年生に実施し,項目の整理と児童の課題意欲及び学級連帯性評価との関連を分析・検討した。その結果,指導行動尺度はある程度信頼性の高い結果が得られた。また,教師の指導方略と課題意欲及び学級連帯性との関連については,小学校教師対象の調査とほぼ一致し,小学5年において「あたたかく課題を突きつける」指導方略が児童の課題意欲及び学級連帯性を高める結果となった。但し,2つの指導性の関連性(統合性)については,一致する結果が得られなかった。 次に,平成23年度の小学5年一学級対象の調査結果をもとに,児童が抱く学級の課題・目標と,教師が認知する学級課題との一致性(教師-児童の課題の一致性)が,教師の2つの指導性統合を促す要因とみなし,質問紙調査を実施した。小学3年から6年生の児童及び担任教師を対象に,74学級,児童総数2,250名,教師74名に協力が得られた。現在分析の途中であるが,中学年においては,教師-児童間で課題の認知が一致している学級では,児童は教師に2つの指導性機能を高く認知するのに対し,高学年においては,部分的に課題が一致している学級の方が,児童は教師に2つの指導性機能を高く認知し,かつ教師に依存しない傾向がみられた。 さらに,教師の2つの指導性が統合した教師の具体像について大学生の回想をもとに分析した。 今後,児童個人単位での課題の一致性を分析すること,2つの指導性機能の連関について分析することが求められる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一に,児童用の教師の指導行動評定項目について,ある程度信頼性が得られたことが挙げられる。 第二に,多数の小学校による調査協力である。毎年,平成22年度科研費研究課題(課題番号20530593)の成果及び従来の教育社会心理学研究の知見をもとに,いくつかの小学校において新人教師の学級経営に関するコンサルテーションを一研究者として実施してきた。その成果として,許可が得られにくい内容の質問紙調査に多数の小学校から協力が得られたと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
第一に,平成24年度に実施した調査データを詳細に分析し,逐次結果を国内外の学会で発表して他の研究者から様々な意見や知見を得て成果を論文等にまとめていく予定である。第二に,論文としてまとめる過程において文献を収集・整理して過去の研究との位置づけを明確にすること,教育現場からの意見・知見をいただいてリアリティのある議論を展開すること,学級観察をおこなって質問紙調査の結果と学級の現状との照合をはかることを予定している。第三に,教師と児童との課題の一致性や共有がはかれる課題状況の検討である。この点については,教師へのインタビューやグループダイナミックスの研究の知見をもとに,仮説を構成する予定である。最後に,教師と児童との課題の一致あるいは共有成立の現象として,学級集団構造に注目した分析を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は,平成24年度実施予定だった詳細なデータ分析作業及び資料整理をおこなうために,平成24年度購入予定だったパソコン機器の購入費として研究費を使用するとともに,パソコン周辺機器・統計ソフトの購入費及び人件費に使用する。加えて,専門的知識を得るため,調査成果の一部を国内外の学会にて発表するための出張費,及び学級観察や教師へのインタビューのための出張費,結果を考察するにあたっての文献資料費,さらに,学級集団構造の予備調査に関する資料収集やアンケート作成に関する物品費や郵送費として使用する予定である。
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