研究実績の概要 |
教師の引き上げる指導と受け入れる指導の統合を具体化した「あたたかく課題を突きつける」指導方略の促進要因として学級の課題状況に注目し,平成27年度は小学校教師・児童を対象に以下の作業をおこなった。 第一に,「あたたかく課題を突きつける」を促す課題状況について,学級のグループ学習場面に注目した。小学校高学年対象に,授業で経験したグループ学習に関するアンケート調査を実施した。その結果,目標が多様であり,また学習中に学級外の集団(e.g.,他学級)と交流するため教師の統制がきかない課題状況のとき,教師の「あたたかく課題を突きつける」指導方略によって,児童はグループの協同と学習意欲を高めた。 第二に,「あたたかく課題を突きつける」を可能にする課題状況として,児童個人の課題要因を検討した。平成25年度に分析した小学3~6年生児対象の質問紙調査のデータのうち,児童が学校生活で重視する目標(志向性)に注目し,志向性を,学習志向,友人関係志向,役割遂行志向に3分類して再分析した。その結果,高学年の学習志向児では,教師の「あたたかく課題を突きつける」指導方略が連帯性を高め,「課題を突きつける」指導方略あるいは「納得できる注意指示」の指導方略が学習意欲を高めることが示された。学習内容が難しくなる高学年児のうち学習重視の児童の抱く学習への不安が,「あたたかく課題を突きつける」が連帯性を高める効果を媒介していると推察される。 一方,学級は様々な志向性の児童で構成されている。多様な学級に有効な指導方略は何かの問題を探索的に検討するために,他の児童とは異なる側面を持つ意味で気がかりな児童が在籍する学級のうち,学級経営が成功した学級とそうではない学級について小学校教諭対象にアンケート調査を実施した。その結果,教師は,気がかりな児童と他の児童とに共通する課題を学級のめあてに設定していることが示唆された。
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