研究課題/領域番号 |
23530855
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研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
竹西 亜古 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (20289010)
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キーワード | リスク認知 / 予測力 / 予防的生徒指導 / 安全教育 / 問題行動 |
研究概要 |
本研究は、問題行動を抑制し予防的・開発的生徒指導に資する基礎的研究として、青少年の自らの行動に対するリスク認知過程を明らかにし、行動の結果に対する予測力を向上させる要因を同定することを目的としている。昨年度は、青少年が問題行動にいたる過程を、当該行動に対するリスク認知と結果の予測を中心に、関係自尊心、低認知欲求、さらには地域や家庭の規範度などの要因を設定した心理モデルとして構築し、モデルを検証するための調査を企画・実施した。 本年度は、昨年度に引き続き、モデル検証に用いるデータを収集するため、中学生・高校生を対象とした調査を実施した。実施対象校は、中学校4校、高校6校であった。昨年度と合算すると中学生約3200名、高校生約8000名のデータが集まった。本年度は協力いただいた対象校ごとの分析と、それに基づく学校ごとの問題点のフィードバックを行うとともに、モデル検証に向けた予備的解析を行った。その結果、対象校の生徒指導上の問題発生頻度と生徒のリスク認知、結果の予測的評価に関連が認められた。さらにモデルを構成する要因であり、影響因と考えられた認知者の自己評価要因(関係自尊心、低認知欲求、学校に対するアイデンティティなど)および環境要因(地域や家庭の規範度など)が、問題行動に対する欲求やリスク認知程度と相関することが明らかになった。次年度はより詳細なモデル解析を行うとともに、認知者の属性等を考慮した分析を実施し、学校教育現場に還元できる知見としてまとめたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.関連する影響因を整理した上で、青少年のリスク認知過程の心理モデルを構築し、モデル検証のために必要な調査データを十分数に集めることができた。 2.予備的分析を行い、モデル内の影響因との相関を得た。このことは構築したモデルが適合する可能性を示唆する。 3.実際に学校現場で発生している生徒指導上の問題の多さと、当該校の生徒のリスク認知や結果予測の不適切さが関連している知見を得た。このことは本研究が現場における問題解決の基礎的研究として有益であることを示唆する。 4.データ収集に協力いただいた対象校ごとの分析を行い、職員研修の場などで当該校の問題点のフィードバックを行った。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までにモデル構築とデータ収集、さらに個別分析とモデルの予備的解析が終了したことから、次年度(最終年度)は、モデルの全体的な解析と知見のまとめに傾注する。解析では、まず中学生と高校生のそれぞれで適合モデルを明らかにし、その異同について発達段階等を考慮した考察を行う。さらに属性などの要因を加えた発展的分析を視野にいれ、特に現在得られているデータは地域性において限られているため、Web調査等の手段を用いて別地域のデータを収集し、比較対照群とすることを考えている。 その上で、適合モデルとして得られた青少年の心理過程を学校現場での問題解決の手がかりとして有効利用できる形で知見としてまとめ、協力を得た対象校に還元していきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用予定は次の通り。 1.データ解析のための費用:1)統計解析ソフトの購入もしくはバージョンアップ、2)解析および報告をまとめるための研究補助謝金、3)消耗品費 2.追加のデータ収集・調査実施費用:1)追加もしくは調査継続を希望する対象校での調査実施費用(調査票、回収封筒の印刷費など)2)地域性に関する比較対象データを収集するためのWeb調査費、3)追加データの入力などの研究補助謝金 3.学校現場に還元しうる形での知見のまとめに必要な費用:1)学校現場用の報告書作成費(印刷・製本費など)2)消耗品費
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