本研究では,平成19年度~20年度科学研究費補助金若手研究(B)で示された母語に関連する素朴理論からの干渉とその抑制を含む「英語の応答に関する認知プロセス」の研究を,更に発展させることが目指された。3年計画の3年目にあたる今年度の主たる研究目的は,素朴理論からの干渉が予想される英語のルール学習場面で,1.「視点切り替え」と「関係操作的思考」を組み込んだ教授方略に,「動作を伴って意思を再確認する活動」も取り入れた場合,異なる構造を持つ課題に対するルールの適用へ影響を及ぼすのかを明らかにすること,2.英語のルール学習において,学習者内で日本語理解の深化が促されるメカニズムを,日本語に関する自覚化の側面も併せて探究することであった。 新たに実施したインタビュー事例に基づいて研究会発表を行い,心理学研究者との討論を行った。報告した事例の特徴としては(1)読み物の読解直後では,きまりへの確信度も高く,読み物への興味深さも高まっていたこと,(2)ルールの一貫適用が見られた場面の数は,事前と事後の調査で変化が見られなかったこと,(3)日本語の「自覚化」に関連して,日本語による応答の使い分けを説明する場面では,混乱が生じたと推測できる反応が見られたことなどが示された。 さらに研究会発表後に実施したインタビューの結果もあわせて,とりわけ,英語のルールを適用できた範囲の変化の有無と,日本語による応答の使い分けを他者に説明する過程に着目して,教育心理学の学会にて発表を行う予定である。
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