研究課題/領域番号 |
23530859
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
藤田 敦 大分大学, 教育福祉科学部, 准教授 (80253376)
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キーワード | 活用型学力 / 学習の転移 |
研究概要 |
既に学習した知識や技能を教科や領域の枠を越えて応用する能力としての「活用型学力」を育成する授業デザインを提案することが本研究の目的である。特に,ある教科(単元)で学習した内容を別の教科や授業外の日常的な問題解決場面にも活用可能な知識に転化する授業方法について探求する。今年度は,学習の連続性(知識の関連性)の認識を促進すると予想される要因が,どのような授業中の教授学習活動に具現化されているのかを実際の授業記録から抽出した。具体的には,小学校の計210時数の授業について,観察記録(ビデオ,筆記),指導案,板書記録を分析対象とし,効果的と予想される活動内容を収集し,授業展開に沿って分類した。23年度に行った文献研究から得られた結果も踏まえながら,以下の教授学習活動のカテゴリーを抽出した。 I:既習内容の振り返りと新たな学習への導入(①関連する既習事項を一般化した表現で確認,②前時の未習事項・未解決問題の確認,③関連知識・経験と新たな学習内容の関連づけ),II:本時のねらい・目標(①主発問とそれを考えていくための具体的な問題・事例の提示,②問題解決時の思考の制約,③工作的発問(~するためには,どうすればよいか)の活用,④①~③を学習者自身が自ら気づくような働きかけ),III:学習活動(①既習内容・他の単元の内容との関連性の示唆,②他者の意見や教科書等の説明との比較を通した学習者自身のアイデアに対する評価,③一般化した表現・ルール表現への促し),IV:応用・練習(①問題演習による学習内容と適用範囲の確認,②応用問題・発展問題による演習),V:まとめ(①学習内容の一般化と本時の学習活動との対応付け,②次時までの確認事項・補充学習内容の提示)。 以上の教授学習活動を含む授業モデル案を作成し,実際の授業を行うための指導案に具体化する作業を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実際の授業記録から,活用型学力の向上に有効だと予想される教授活動を整理・分類するという計画は,ほぼ達成できた(この研究成果は,次年度に学会発表の予定)。ただし,分析対象が小学校の授業記録(特に国語と算数)に偏っていたため,分析する教科と学年を拡充し,より汎用性のある授業モデルの構成が次年度以降の課題として持ち越すことになった。前年度,および今年度の分析結果を踏まえて,授業モデル(教授学習活動パターン)を構築する作業にも着手することができた。この授業モデルを作成するにあたって,提案された教授学習活動の効果の検証を試みた実験結果は学会で発表することができた。以上のように,当初計画の全てを達成できたわけではなかったが,学会発表可能なレベルまで結果を整理できたことや,次年度に計画を完遂できる見通しが立ったことを踏まえ,おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まず,効果的な教授学習活動を抽出する授業記録の分析対象範囲を,中学校や理科,社会等の教科にも拡げ,より汎用性のある授業モデルを構築するためのデータを収集する。その上で,その授業モデルをベースとした指導案に沿った実験授業を実施し,その教育効果を測定する。その効果は,学習者の,中心概念や関連概念に対する理解の程度,興味・関心の深まり,社会的な有用性や意義の認識,転移課題成績などによって評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究発表のために参加した学会の一つにおいて,相手先負担による旅費の支給があり,本研究費からの支出の必要がなくなったこと,また,謝金を要する作業の日程が遅れ,H25年度の研究費から支出することになったために,次年度使用額が生じてしまった。 次年度は,授業モデルの効果を検証する実験授業を実施するために,教材作成用のテキストの追加購入,および消耗品の購入が必要となる。また,多方向から授業場面を記録するための複数台のビデオカメラと記録メディア等も準備する。さらに,ビデオデータのテキスト化や授業記録や指導案を収集・分類する作業を依頼するための謝金,研究成果を学会発表(日本心理学会,九州心理学会)するための旅費の使用を計画している。
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