本研究は映像の発達的意味を明確にし、映像利用の発達心理学研究法を構築することを最終目的に、発達心理学研究者の映像実践と、他領域及び日常の各種映像実践を比較し相対化した。具体的には、1子どもの図像・映像資料の収集と分析、2子どもを巡る映像実践に関するフィールド縦断研究、を行った。 1は社会文化歴史的相対化であり、子どもの図像・映像資料の収集のために国内外のアーカイブス機関に赴き、閲覧、複写可能な資料をデータ化した。英国と米国の拠点に出張したほか、非欧米、非アジアの中米で資料収集し、基本的な子どもの表象の差異を分析した。 2のフィールド研究は、現代の日常的映像実践と発達研究の相対化である。現代の映像機器やSNSにおける映像表現は養育者による子どもの発達記録の役割を持つため、過去の養育者による子どもの日誌記録と比較検討した。両資料を分析し、映像のもつ特性と人々のもつ子ども・発達・育児観との相互規定関係を検討した。成果は雑誌論文にまとめた。 また、2013年度半ばからNHKアーカイブズの映像資料を継続して視聴分析できる好機に恵まれたため、本研究課題をより発展させ、過去の2時点と現代の公共放送映像がもたらす子ども観を多くのアーカイブス映像資料の分析によって検討することができた。この成果は学会発表したほか、平成26年度以降の研究テーマとしてさらに継続させる研究計画を立てた。現在最終年度の過ぎた本研究の基礎の上に、発展的に計画されたため特に上記、1,2に関して、社会文化歴史的観点からのさらなる探索と理論的精緻化を行い、新たに膨大な歴史性と量を持つ放送資料も射程に入れた新しい枠組みを構築することができた。
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