研究課題/領域番号 |
23530867
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研究機関 | 白百合女子大学 |
研究代表者 |
秦野 悦子 白百合女子大学, 文学部, 教授 (50114921)
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キーワード | インクルーシブな保育・教育 / 活動参加への支援 / 発達障害児 / 保育ニーズ / 保育の協働と連携 / 発達語用論 |
研究概要 |
1.日常活動の参加を支援する保育実践: 発達障害児を対象に、複数の保育所にて、3歳児・4歳児・5歳児クラスでの年間を通してのインクルーシブな保育実践のデータを蓄積し分析を進めた。特に、①要支援児が複数在籍しているクラスにおける日常活動参加への支援、②行事やイベントなどにおける活動参加への支援、③特定対象児に対する高頻度な定期的観察による保育実践データの収集を継続した。発達障害の保育場面における活動参加における支援のあり方については、保育者とカンファレンスを重ねてきている。 2.インクルーシブな保育実践のリフレクション : 保育者相互の実践交換研修会を通しての自己の語り、他者の語りから保育実践の省察と保育技術、アセスメント、対応などから、こども理解を深めるプロセスをどのようにリフレクションしていくかの保育実践について語りのデータの分析を進めた。 3.コミュニケーションの発達語用論的評価に向けての基礎実験 : 3歳児・4歳児・5歳児の定型発達児を対象に言葉遊び調査として、発達語用論的観点から、対面調査を実施した。内容は(1)コミュニケーション評価としてLCスケール、(2)物語再生によるナラティブ、(3)日常事象知識に関する絵画配列、(4)状況絵の説明、等を行い、幼児期のコミュニケ-ションにおけるテキストとコンテキスト、事象知識との関連性を年齢ごとにどのようにとらえていくのかについて基礎データを収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インクルーシブ保育・教育における日常活動の参加を支援するシステムの研究において以下の3つの研究企画を行った。 1.3歳児クラス以上の特別保育ニーズ児に対する個人の特性を明らかにする。1名につ き、年3回の保育観察およびアセスメント(K=ABC、WISCIII、DN-CAS)、保育カンファ レンス実施。2008年度~2010年度科学研究費研究の継続として研究参加児の協力を得 る。毎年3歳児が新規に研究参加児として加わる。 2.5歳児クラスの特別保育ニーズ児に対しては、保小連携と申送りについて卒園時期(3月)調査、1年生7月、3月、2年生7月、3月期にそれぞれの追跡調査、学校訪問、学級 参観を実施。2010年度入学者から実施している対象児も引きつづき継続する。 3.統制されない登園から降園までの保育観察により、特別保育ニーズ児が、保育集団 によってどのようなパーソナルネットワークを持ち、そこに保育者がどのように関 わるのかという視点でネットワーク分析を行う。1名につき年3回の観察を実施。イ ンクルーシブな保育・教育現場で活用しうる支援試案を作成する。 達成度については、上記1については70%、上記2については65%、上記3については80%であるといえる。データの随時の収集については実施されているが、データの整理や分析について、十分には手が回らず分析に時間をかけることができていない状況である。今後は、データの収集、整理や分析に訓練された研究補助員を投入して、整理分析の比重を高めていく必要がある。 一方、研究企画の当初の予定にはなかった「コミュニケーションの発達語用論的評価に向けての基礎実験」を行うことによって、定型発達児の基礎データを収集した。これと同様の調査を特別保育ニーズ児に対しても発展させていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度(平成25年度)は研究の最終年度にあたり、これまでの継続的データ収集を重ねると共に、データの整理・分析に重点をおく。合わせて発展的取り組みである「インクルーシブな保育実践のリフレクション」をまとめると共に、「コミュニケーションの発達語用論的評価に向けての基礎実験」についても特別保育ニーズ児である発達障害幼児に対しても試行的にデータを集めて、研究を発展的に方向づけることを行う。具体的には以下の3点を行う。 1.3歳児クラス以上の特別保育ニーズ児に対する個人の特性を明らかにする。これについては、継続的なデータを取ること、コミュニケーションの発達語用論的評価について新たなデータを収集する。卒園以降の児については、可能な限り、追跡データを追う。これにより、保育活動参加を子ども特性から明らかにする。 2.日常活動の参加を支援する保育実践のこれまでの観察データの分析を集中的に進める。合わせて、「インクルーシブな保育実践のリフレクション」データとの突き合わせの中で、インクルーシブ保育・教育における日常活動の参加を支援するシステムについてのまとめを行う。 3.「コミュニケーションの発達語用論的評価に向けての基礎実験」について3歳児・4歳児・5歳児のデータを量的質的に分析をすすめ、幼児期の保育における活動参加に際して のコミュニケーション力を保育フィールドにおけるパーソナルネットワークとの関係で分析をしまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
今後の研究の推進方策との関係で2013年度(平成25年度)は、以下のような研究費の使用を計画している。 第1に、ルーティンワーク的データの収集、発達検査・知能検査、コミュニケーションの発達語用論的評価調査にあたっては、訓練された大学院生を中心にマンパワーの投入を集中的に行う。第2に、観察映像データの編集、プロトコル転記としての音声情報の文字化、カテゴリー分類、統計分析など学部生、大学院生、専門的技能者などを中心にマンパワーの投入を行う。以上1および2を実施するアルバイト謝金として1,200,000円。 インクルーシブ保育実践の海外視察や研修、学会参加として500,000円。 フィールドに持ち出すPC、プリンター、その他関連消耗備品、図書として300,000円。
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