24年度に調査対象となった4歳児達の1年後(25年度・5歳時点)、2年後(26年度・6歳時点)を追い、自由遊び場面の参与観察(週1回)と、1対1のインタビュー(年度末に1回)を行った。インタビューでは、園生活における対象児自身ならびに他者(友だち)の情動経験および情動表出の機能についての認識について尋ね、それらの認識の変化と多様性を検討した。 その結果、喜びの情動経験については、4歳時点ですでにほとんどの子どもが、自他ともにあると答えた一方、悲しみと怒りについては、4歳時点では、ないとした子どもの方が多かった。特に怒りについては5歳時点でも、ないとする子どもが多く、とりわけ自身の怒りについては6歳時点でも、ないとする子どもの方が多かった。他方、他者の悲しみと怒りについては、6歳時点になるとよく語られるようになった。そこから、喜びの情動経験については、4歳時点ですでに認識され語られやすいことが窺える一方、自身の悲しみと怒りの情動経験について語ることは、6歳時点であっても必ずしも容易ではないことが窺える。 それぞれの情動が表出されたときに、自他はどのように対応するかについては、喜びと悲しみについては、5歳時点ですでにほとんどの子どもたちが語っていた。一方、怒りについては、5歳時点ではほとんどが対応を語ったのに対して、1年後の6歳時点では、むしろ語らなくなった子どもたちが少なからず見られた。そこから、喜びと悲しみの表出の機能については、幼児期後期には認識されていることが示唆される。一方、怒りの表出については、5歳時点よりも6歳時点での方が語られにくいといったことが少なからず見られ、怒り情動の表出についての認識の発達が,加齢とともに直線的に進むといった単純なものではないことが示唆される。今後、語られた内容(あるいは語られなかったこと)について分析を進めることが必要である。
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