研究課題/領域番号 |
23530869
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
柿沼 美紀 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (00328882)
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研究分担者 |
五十嵐 一枝 白百合女子大学, 文学部, 教授 (00338568)
上村 佳世子 文京学院大学, 人間学部, 教授 (70213395)
紺野 道子 東京都市大学, 人間科学部, 講師 (30307110)
野瀬 出 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 助教 (60337623)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 高機能自閉症児 / 母子の語り / 国際情報交流 / 日中比較 / 指差し |
研究概要 |
高機能自閉症児は社会的葛藤場面の理解に困難を示すが、専門機関でのトレーニングによって改善することが知られている。本研究では、高機能自閉症児に同じ課題を実施し、定型発達児との比較から、共通点、相違点を明らかにすることを目指した。 平成23年度は日本であらたに17組の高機能自閉症児を対象に課題を実施し、その結果を定型発達児のものと比較した。特に母子間の共同行為(語り、非言語行動、何をどのように伝達するか、何に注目するか(見ないもの)、子どもは場面にどう対応するか、主導性(発話交代、場面の選択)や非言語行動(身振り、指さし)母親に対してどう振る舞うかなどについて検討した。 その結果、自閉症児の発話では「内面への言及」が少ないこと、発話中の「指差し」の頻度が定型発達児よりも多かった。これは母子のやり取りにおいて、子が話を聞き、母親に合わせるのではなく、自分が中心になって話をすすめる傾向が反映していると思われる。 現在中国で同様のデータを収集しており、平成23年度に15組を対象に行った。その結果、中国の自閉症児の指差しの頻度は日本に比べて低く、その傾向は定型発達児のものと似ていた。つまり、日本の自閉症児の指差しの多さは生得的というよりも獲得されたものと考えられる。このように同じ課題を文化を越えて定型発達児と自閉症児に実施することで、神経系の問題と教育あるいは環境の影響について詳細に分析することが可能になると考える。 平成24年度は、中国の定型発達児と高機能自閉症児の比較を行う。また、両国の自閉症児の特徴についても詳細な検討行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
中国の研究協力者と3度に渡って打ち合わせを行い、中国でのデータ収集を今年度に開始することができた。これは事前の綿密な関係があったこと、また予定よりもはやく中国の研究協力者と具体的な打ち合わせが可能になったことがある。 日本のデータに関しては当初の計画通りである。 日本のデータも三カ所で集めることができたため、一定量のデータをもとに途中経過を日本心理学会と発達心理学会で報告することが可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は中国の研究協力者を2週間招聘し、中国のデータを日本の解析ソフトを用いて分析する(解析ソフトが中国側にはないため)。その後、コーディング及び行動分析について双方のデータをもとに検討する。共同で解析を行うことで、話し合いを深めることが可能になる。国際的な研究において、こういった時間を共有することは重要と考える。 日本、中国とも引き続きデータ収集を行う。日本では那覇市内でさらに一カ所データ収集場所を追加する。また、共同研究者に琉球大学の財部盛久教授を加え、沖縄の研究協力者との連携を密にする。 7月にフランスで開催されるIACAPAPにて発表予定。国内では日本心理学会、教育心理学会、発達心理学会にて発表予定。 年度の後半では、療育のあり方に向けての検討を開始する。
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次年度の研究費の使用計画 |
中国からの研究者の招聘費(旅費、滞在費)2週間分。 行動解析データ入力とテープ起こしの謝金。 国際学会参加費、国内学会参加費
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