研究課題/領域番号 |
23530869
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
柿沼 美紀 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (00328882)
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研究分担者 |
五十嵐 一枝 白百合女子大学, 文学部, 教授 (00338568)
上村 佳世子 文京学院大学, 人間学部, 教授 (70213395)
紺野 道子 東京都市大学, 人間科学部, 講師 (30307110)
野瀬 出 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 講師 (60337623)
財部 盛久 琉球大学, 法文学部, 教授 (50175436)
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キーワード | 高機能自閉症児 / 母子の語り / 国際情報交流 / 日中比較 / 指差し |
研究概要 |
高機能自閉症児は社会的葛藤場面の理解に困難を示すが、専門機関でのトレーニングによって改善することが知られている。本研究では、日本と中国の高機能自閉症児と定型発達児に同じ課題を実施し、神経学的要因と環境的要因の作用について検討することを目的とした。 平成23年度の成果として、日本の高機能自閉症児の母親は定型発達児の母親に比べ指差しが少なく、子どもが1人で話す傾向が見られた。また発話内容は「内面への言及」が少ないことが明らかになった。 平成24年度は中国のデータを同様に分析し、定型発達児と高機能自閉症児を2国間で比較した。その結果、中国の高機能自閉症児とその母親の指差し頻度は中国及び日本の定型発達児と同様であった。一方、発話内容においては「内面への言及」が少なかった。このことから、指差しの頻度においては環境的な要因がある程度影響しているが、内面の理解の困難さに関しては、神経学的な要因が影響していると考えられる。 平成25年度は、引き続き詳細な発話分析から日本と中国の比較を行う。またTobiiのアイトラッカーを用いて、日本の定型発達児及び高機能自閉症児の絵を見た時の情報収集のパターンの比較検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
年度の前半で中国データの収集を終了。6月には日本獣医生命科学大学にて中国の研究協力者2名と行動データ解析を行った。その結果、日本の高機能自閉症児の母親の指差し頻度は、中国の定型及び高機能自閉症児、また日本の定型発達児に比べ極めて少なかった。これは、高機能自閉症児の母親の養育態度は、文化的影響を受けていることを示唆するものだった。 7月にはパリで開催されたIACAPAPにて行動データの解析結果を報告、11月には沖縄で開催された教育心理学会でさらに詳細な行動比較結果について報告した。 その後、当初は三年目に予定していた行動解析結果との関連で発話データを解析した。途中経過を3月の発達心理学会にて報告した。高機能自閉症児の場合、母親の指差しの頻度に関して文化差が見られたが、発話内容の分析から、日本も中国も定型発達児に比べ、他者の内面への言及が少なかった。これは、語りの行動様式は文化的影響を受けているが、他者理解に関しては神経学的な問題が反映されていることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き日本と中国の行動データと発話データの比較検討を行う。その結果を8月に東京で開催される教育心理学会で報告する。 これまでの研究から、高機能自閉症児と定型発達児では、語り用の絵を見た場合、着目する部分が異なることが明らかになった。これは千住らのアイトラッカーを用いた高機能自閉症の研究結果とも一致するものである。そこで、アイトラッカーを用い、定型発達児と高機能自閉症児の視線の動きを比較することとした。今年度は東京と沖縄で定型発達児及び高機能自閉症児を対象にこれまでと同じ刺激を用いてデータ収集を開始する。途中経過を3月に第25回発達心理学会で報告する。 来年度以降は中国で同様のデータ収集をするため、中国の研究協力者とも打ち合わせを行う。 研究協力者として中山大学の静進と金宇、日本大学の高橋桃子、たかえすクリニックの上地亜矢子が参加する。
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次年度の研究費の使用計画 |
Tobii eye tracker 用ソフト、Tobii studio basic(411,600円) 行動及び発話解析謝金 沖縄でのデータ収集用旅費 国内学会参加費
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